〈File 3〉 ページ39
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今日は探偵事務所の仕事はないから、ワッターの店を手伝っていた。
すると思わぬ来客がやって来た。
「渉、A」
「ガヤさん、いらっしゃいませ」
ガヤさんだった。
でもデニムのセットアップだから刑事の時の姿じゃない。
「今日は非番ですか?」
「そうそう。今日は今のところ事件が転がってないしね。零課は俊一人で平気」
ガヤさんはカウンター席に座り、ワッターにコーヒーを頼んだ。
そして私の方を向いて。
「Aさ、ずっと訊きたかったんだけど」
「何?」
「Aって俊くんのこと好きだよね?違う?」
今私何も持ってなくて良かった。
「俺調子の良い時は心の声も聞こえちゃうって言ったでしょ。Aから俊くんへの恋心の声が聞こえたよ」
「俺もだろうなと思ってたよ」
ワッターはガヤさんにコーヒーを出す。
「ワッターまで。俊くんとはいとこ同士だから……」
「でもいとこ同士は法律上結婚しても問題ないじゃん」
「だよねえ」
「…………」
まあこの人たちに言っても問題はないだろう。
だって当の本人にも知られてるわけだし。
「……好き、ですよ。俊くんのこと、ずっと」
「ずっと?でもこないだ元彼が出てきたよね」
痛いところを突かれて胸が痛くなる。
「中学生のときにいとこ同士だからってフラれてるので……。だから告白してきた人たちと今まで付き合ってきたんです」
今でもあの時のことを思い出す。
勇気を振り絞って俊くんに告白したけど、俺たちはいとこ同士だからと断られた。
俊くんはものすごく困った顔をしてた。
それからは仲の良いいとこ同士をやってこられたと思う。
私は俊くんに甘えて、俊くんは私を甘やかしてくれて。
ずっと俊くんのことは好きだけど、俊くんと一緒にいられるのは今の関係だからと思うと、また勇気は振り絞れない。
「なるほどね。辛い話させてごめんね」
「ううん。大丈夫」
「今は一緒に働いてるみたいなものだし、お互い大人になってるから何か変わるんじゃないかな」
「俺もそう思う」
「そうかなあ」
自信はない。
俊くんとは心で会話はできるけど、肝心の所までは分からないから。
「私の気持ち、あとの4人は知ってるのかな?」
「皆どこかで感じ取ってると思うよ」
「そうだよね」
少し溜め息は出るけどしょうがないと思ってたら、ドアの開く音がした。
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真衣 - はじめまして。いとこ同士って結婚出来ないと聞いた記憶があるのですが、出来るんでしょうか?PS昔(1996年頃)、少女漫画雑誌・りぼんでよく似た設定(探偵では無いですが。作者:池野恋先生 おしえて菜花)があったことを思い出しました。 (10月21日 19時) (レス) @page50 id: 29eac809bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年3月15日 15時