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「先生運転お疲れ様でした」
「Aちゃんもね」
ようやく落ち着けた気がして2人して畳の上に転がる。
藺草の良い匂いがする。
「この後どうします?」
「夕飯まではまだ時間あるみたいだけど、Aちゃんは何かしたい?」
「先生は?」
「今日はAちゃんが主役なんだから」
「それいつもと変わらない気が」
「そうかな。俺が連れ出してることだってあるじゃん」
「そうですかねえ」
寝転びながら他愛のない会話。
それだけでも俺は満たされていくんだからAちゃんは凄い。
「じゃあここで晩ご飯までのんびりしてようか。お茶とお饅頭でもいただきながら」
「ですね」
そうしてしばらくのんびりしていたらAちゃんのスマホがバイブした。
「誰だろ。……お母さんだ」
スマホを一緒に見せてもらう。
お母さんは家に来たらしいがAちゃんがいなかったからどこにいるかという旨の文面だった。
「彼氏と旅行してるって書いていいですよね」
「OKOK」
そんな文章を送ったらすぐに返信があったけど、そう、分かったといったものすごくあっさりとしたものだった。
「もっと何かないのかなあ」
そう呟くAちゃんの瞳が曇っていくのを見たくなくて。
「Aちゃん」
手を広げればAちゃんは来てくれるから抱きしめる。
「私には、俊哉さんがいるし、友達がいるもん」
「そうそう。Aちゃんはタマたちがいるし、俺がいるよ」
別の人によって生じる寂しさはどうか俺で埋めて欲しいって心底思う。
むしろ俺だけであって欲しいと思うのは醜い感情だろうか。
くっつき合って、うだうだしてるだけでも楽しくて、気付いたら眠ってしまっていて、夕食の時間まで寝てしまった。
夕食は部屋に運ばれるスタイルで川魚やジビエ、地元の山菜を使った料理が豪華に出てきた。
どれも普段じゃお目にかかれないもので美味しく味わえた。
「本当に贅沢三昧ですね」
「満足されましたか?」
「とても。しばらくは質素に過ごさないと。2キロぐらい太った気もがします」
「俺もそれぐらいいったかも。帰ったらプチダイエットしようか」
「先生十分スマートな気がしますが」
「それを言うならAちゃんもだからね」
またどっちもどっちな会話をして、少し休んだところ後温泉に2人で向かう。
「じゃあ後でね」
「はい」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年2月23日 15時