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まだ9時になってないにも関わらず、休日のサービスエリアは人が多くいて、その人たちは皆楽しそうにしている。
俺たちもそういうふうに見えてたらいいね。
次のハンドルはAちゃん。
俺をすごく気遣ってる感じが出てる。
「Aちゃんもっとスピード出しても平気だよ」
「一人だったらと思うんですけど、俊哉さんを乗せてるとより安全運転を、と思ってしまいます」
「危険な運転してなきゃ平気平気」
「じゃあ少しスピード出しますね」
それよりもたまにナチュラルに繰り出された名前呼びにドキドキしちゃう。
基本は先生呼びだからたまに名前で呼ばれると新鮮にドキドキしちゃう。
ここだけの話、俺はね秘かにタマたちが自然とAって呼んでるのが羨ましかったりする。
基本女性はさん付けだから、その一段上となるとちゃん付けになってしまう。
だからいつもAちゃん。
A……はまだ何だか恐れ多い。
そんなことを色々考えていたら、高速を降りて最初の目的地に着いた。
車を出て伸びをする。
鼻に抜けるのは潮の香り。
まずは海にやってきた。
「晴れて良かった」
「ですね。普段人工物ばかり見てるから自然の物見るだけで癒される」
「確かにね。だから今回のルートを提案したんだけど、いがかですか?」
「はい、現時点で楽しいです。まあ先生とだったら何でも楽しいんですけどね」
「それはこっちの台詞」
美月ちゃんといればどんな世界だって天国なんだから。
俺たちは砂浜に下りて、海を横目に見ながら歩く。
10月も近くなってくるとさすがに人はまばらだった。
歩きながら俺は先週の日曜の話をした。
1週間近く経って、キタヤンから何の報告がなかったから平和なのだろうと判断して。
「私も参加したかったです」
「それでもしAちゃんに何かあったら俺が死んじゃう」
「ところで、どうしてそんなに先生キレキレなんです?」
キタヤンと同じことをAちゃんに訊かれた。
「人の顔色ばかり見てたからかな。あと事前準備もしっかりしたいタイプだからかな、としか言いようがない」
自分でもその辺りはよく分かってない。
気付いたらその辺りが鋭くなってて、大学生の頃には探偵の真似事を友人に頼まれたときはしてたっけ。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年2月23日 15時