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あの頃思いもしなかった未来に今いる。
となると未来は俺の思っているものにはいかないかもしれない。
そういう思考になってしまう自分が嫌だった。
そういう思考は付き合い出した頃から、いや好きだと気付いたときからずっとある。
俺は今運良く君の隣にいられてるけど、ある日突然不可抗力に別の誰かが君の隣に立ってしまうことだって有り得る。
人生ってどう転がるか分からないんだから。
「先生、あーん」
「ありがとう。あーん」
Aちゃんは年々可愛くなって、素敵になって、俺にこうして甘えてくれて、それがとても嬉しくて。
でも不安とは常に背中合わせで。
同じような不安を抱えているであろう先輩たちと溜め息が重なった日を思い出す。
「また先生たちとご飯食べに行きたいんですけどね」
「今実現したらさらに盛り上がるね」
「それとかんなたちとも」
Aちゃんのお友達の最近のトピックといえば。
「そういえばニカ良かったね」
「良かったですね」
ニカが弥生さんと付き合うようになった報告してくれたときは本当に嬉しかったな。
たくさんニカの辛そうな顔を見てきたから余計に。
「もう私たちの周りの大事な人達の恋のお節介は大丈夫ですね」
「うん」
俺たちの恋を応援してくれた人たちだから、その人達の恋を応援したくて、自己満足なのは分かり切ってたけど、色々動いた。
恋人いる・いないで幸せだとか充実度とか測れないとは思うけど、俺たちの大事な人達は皆幸せそうで何よりだ。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「連れていっていただきありがとうございました」
「どういたしまして。帰ろうか。明日は少し早いから」
明日から1泊2日、俺たちは初めての旅行に出かける。
今から明日のことを考えて緊張している。
だってせっかくなんだから思い出に残ることをしたいじゃないか。
焼肉屋を出た後はAちゃんの家へ。
今夜は彼女の家に泊まって明日はここから出発する予定だ。
「ご両親から誕生日に何かあった?」
「母からはメッセージがありました。父は誕生日を覚えてるかどうかも怪しいです」
相変わらず何だかなあと思ってしまう。
そんなに自分の娘への関心って薄いもんなの?とどうしたって考えてしまう。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年2月23日 15時