* ページ4
・
初めて行く彼女の家は夜も更けているのにひっそりとしていて暗かった。
だけど当時の俺はそこを突っ込む勇気が出なかった。
「……ありがとうございました」
「うん。……おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
彼女がちゃんと家に帰るのを見届けて俺は来た道を引き返す。
これがある意味Aちゃんとの出会いと言えるのかもしれない。
一気に酔いが覚めてしまうほどの衝撃を受けた夜を俺は一生忘れないだろう。
*
そんな彼女が今では俺の大事な彼女になるんだから人生というのは分からないものだ。
さて、先日そんな大事な彼女、Aちゃんが20歳を迎えました。
誕生日当日は平日だったので、手始めに腕時計をプレゼントし、生まれてきてくれてありがとうと俺と出会ってくれてありがとうと言いました。
Aちゃんは満面の笑みを浮かべて、俺にハグしてくれました。
せっかくの節目の誕生日。
別に去年が手抜きだったわけじゃないけど、今日からが本番だといっても過言ではない。
もう俺の全力でお祝いする気満々だった。
そんな誕生日を迎えた週の金曜日。
いつもなら少し残業しちゃうところだが、生徒たちの最終下校時刻と一緒に、先輩3人になんとなく温かい目で見られながら学校を出た。
金曜日はAちゃんが授業ビッチリな日だから俺が彼女を大学まで迎えにいく。
俺の母校でもある大学に行くと正門の近くでAちゃんは待っていた。
「ごめんね、待った?」
「少し前に終わったばかりです」
「じゃあ行こう」
「はい」
今晩はAちゃんのリクエストで焼肉だった。
この焼肉屋さんはすっかり先輩たちとの中で行きつけになっていて、俺もAちゃんを連れていった。
Aちゃんはたんとお食べという俺の言葉に応えるように美味しそうに食べている。
可愛いなと思うと同時にあのときのことを思い出した。
「どうかしました?」
「Aちゃんの黒歴史を初めて見たときのことを思い出してたんだよね」
「思い返すと私めちゃくちゃ態度悪かったじゃないですか」
「だね。めっちゃ敵意剥き出しで」
「恥ずかしい」
顔を赤くさせちゃって可愛かった。
「あのときはまさか今恋人同士になってるなんて思いもしなかった」
「本当ですね。あのときはまさか先生を好きになるなんて考えもしませんでした」
・
33人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年2月23日 15時