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俺は一人の男としてAちゃんを助けて、救って、守ってるつもりだった。
でもいつも助けられて、救われて、守られてるのは俺の方だった。
日々社会の中で生きてれば色々ある。
教師はやり甲斐のある仕事だけど、手厳しい意見を頂戴することもある。
生徒と折り合いがつかないことはザラだ。
正直良い思い出と良くない思い出は半々。
そりゃ人間だから疲れ果ててしまうことだってある。
そんな時Aちゃんに会うとそんな気持ちが解れていく。
最初はあんな態度が悪かった君が今では俺に甘えてくれて、それが俺を俺らしくしてくれる。
おかしいな。
これまで恋愛は二の次三の次だったのに。
今では最上位で君がいなくちゃやってられないぐらいに、Aちゃんはこの世で一番大切な人になっている。
そんな子にそんなこと言われちゃったらさ。
「俊哉さん……?」
「俺の方こそ。俺と出会ってくれてありがとう、なんだよ」
俺の声は若干涙声になってた。
「泣いてます?」
「年取ると涙腺がね」
ハハッと笑ってみせても君の気持ちに感動しちゃったことは許してね。
そして俺は覚悟を決めて彼女をぎゅっと抱きしめる。
お互い浴衣であることで余計意識させた。
「あのさ、Aちゃん」
「はい」
「キスより先のことしていい?」
「……緊張します」
彼女の顔を覗き込めば顔を赤くさせた彼女と目が合った。
その頬に触れる。
「俺も緊張しまくりだよ。好きな子を抱くんだから」
俺は唾を飲み込む。
そして口を開いて。
「A」
「……ちゃん付けじゃない」
「実はね、タマたちが少し羨ましかったの。……ねえ、A、優しくするから全部俺に預けて」
「……それはずっとで、いいですか?」
「もちろん」
A、好きだよ。
そう呟いて口付けを交わす。
これがきっと生きてた中で一番甘い夜になる―――。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年2月23日 15時