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あれからAちゃんがパートの日には必ず食堂に顔を出すようになった。
それは祐子が食堂までくっついてきても変わらない。
いや、変えてなるものか。
「ニカ、さっき話してたの誰?」
「俺の幼馴染の浅野Aさん」
「へえ」
一応の紹介はしておいた。
ここで何も言わないのはさすがにおかしいと思って。
「随分と仲良さげだね」
「家が隣同士で、もう一人の姉ちゃんって感じで」
「結婚してるの?」
「してるよ」
「どうりで。何か所帯じみてる感じがしたから」
なんだかんだで大学の中で話すのは祐子だけど、彼女を美月、かんな、大沢文乃と同じカテゴリーに入れるのは何かが違う。
何が違うのか考えてみると、祐子には思いやりが足りないのかなと考えつく。
祐子はさっきみたいに言葉に棘がある。
同じ学部の他の女子曰く、よく普通に接することができるね、らしい。
祐子がよく一緒にいる連中も確かにお近付きにはなりたくない。
比べてしまうと美月、かんな、文乃は性格が良い。
基本フラットで、仲間に対しては肩入れする。
前に女子3人に3人の時は何を話すのか訊いたことがある。
「今は恋バナが中心だよね。先生と何したとか、千ちゃんがどうとか、藤ヶ谷先生がかっこいいとか」
ちなみに文乃は俺たちの高校の先生の藤ヶ谷太輔と付き合っている。
「あとは学校のこと。最近だと教習所のこととか」
「なんか平和だな」
「私たち自分に害が及ばない限り誰かの悪口とか言わないもん。そういう男子3人たちもでしょ?」
「まあね」
男子3人でも会話は似たようなもの。
平和主義だから合うのかな、俺たち。
でも前に言ったように中学の俺は人の道を逸れていた。
周りの人間全て敵だと思ってたし、心を入れ換えてもまだ思ってたし。
それが徐々に角が取れて丸くなっていったのは高2の時に6人で一緒に行動するようになってから。
タマも千賀も、美月もかんなも文乃も皆基本優しいから、俺も優しくしようと思える。
そう考えたら祐子を始め大学の人たちにはそれが足りない。
これが世間では普通なのかもしれないけど。
その優しさを他の人にもあげたい。
今はAちゃん。
今日はパートの日で俺も4限で終わったから一緒に大学を出た。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時