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「いつもご主人ふんぞり返ってAちゃんを手下のように扱ってるから」
やっぱり夫婦というよりは主従関係だ。
もっと促してみようか。
と思ったら松添さんはスルスル喋る。
「その後は大きな音がしてね。ここ壁が薄いから。あの旦那さん見てくれは良いけど典型的なモラハラ夫よ」
松添さんは断言した。
多分これまでの積み重ねだろう。
マダムはよほど俺に言いたいのか止まらない。
「あの旦那さんエリートでしょ?休日出勤とか出張だとか本当かもしれないけど、なんだか怪しいのよねえ」
「不倫ですか?」
「もしそれが本当なら家で彼女を縛って、自分は外で羽を伸ばしまくるって最低なパターンよね……」
松添さんの表情から読み取るに、彼女は暇潰しの野次馬ではなく、本気で娘のようにAちゃんを心配していると分かる。
しかし松添さんの言ってることは全部状況推理。
確たる証拠はない。
俺は麦茶を飲み切った。
そして適当な理由をつけて、松添家から出た。
「……というわけなんだけど」
その日の夜、俺は美月に電話をかけた。
丁度宮田と一緒にいるところだったらしいが。
というかラブラブだね、二人。
「ニカが欲しいのは確たる証拠ね……」
「そう。どうすればいいかな」
「そんなにそれが欲しいなら旦那さんを尾行してみたら?」
「尾行?」
思わぬ提案にオウム返しをしてしまった。
「そんなに尾行ってできるもの?」
「私はしたことないけど先生たちはしてる。例えば北山先生をストーカーしてる人を先生たち3人が尾行してたみたいだし、横尾先生と今の彼女さんはその時彼女さんが付き合ってた彼氏の浮気調査をしてたし、できないことはないと思う、もちろんカモフラージュとか変装は必要だと思うけど」
それってどういう状況よ、特にミツのはって思ったけど突っ込むのはやめた。
「尾行ね……」
「カモフラージュが必要なら手助けを……」
「いや、やるとしたら一人でやるから」
「分かった。やるときは気を付けてね」
「うん」
美月との電話を終えた後、俺は腕を組んで考えた。
俺が知ってることは全部伝聞だ。
やっぱり自分の目で確かめたい。
俺はスマホで変装グッズの検索をした。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時