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「こういうとき無力だなと思うんだよね」
「ん?」
「俺たちってまだ親の脛を齧ってる大学生じゃん」
「だね」
「こういう場面で戦える術が分からない」
「そういうときは大人の力を借りちゃえばいい」
美月は明るくサムズアップしてスマホを取り出した。
「大人の力?」
「私たちには先生がいる」
そう言って美月はどこかに電話をかけた。
まあどこかなんて分かり切ってるけど。
「もしもし、宮田先生?」
やっぱり宮だった。
かくかくしかじかと美月が宮に説明していた。
「それで何か先生サイドに伝手はないかと思いまして」
大人たちは俺たちよりも繋がりが多いはず。
それに期待したい。
美月は宮と二、三やり取りをした後電話を切った。
「宮田先生自身に夫婦問題に詳しそうな伝手はないみたいだから、他の先生たちに訊いてみるって」
「ありがとう、美月」
「お安い御用よ」
その後は普通に食事をした。
だけど食べながら思ったのは。
「ねえ美月」
「何?」
「美月はこうして応援してくれてるじゃん?でもあとの4人はどう思ってるんだろうね」
「特に千ちゃんはね」
美月が強調するように言うから俺は手が止まる。
「千ちゃんならもう少し詳しく知ってるかなと思って、探ってみたんだけど私と同じで。千ちゃんも悩んでたよ。応援すべきかどうかって」
いの一番に俺は中学からの親友に言うべきだったのかもしれない。
でも俺はあいつのスケジュールと自分のスケジュールを言い訳に逃げていた。
「時間作ってあとの4人にも所信表明しときたいな。不倫は絶対しないって」
「応援してる」
また美月の優しさに救われた夜になった。
いつかは美月にたっぷりお礼をしないとと思いながら晩飯を完食した。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時