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2限が終わり、食堂へ行こうとしたところ祐子がついてきた。
「一緒にいいでしょ」
「うん、いいよ」
別に断る理由がないから一緒に行く。
Aちゃんが働いてるのが見えたけど、祐子と一緒だから声がかけづらい。
向かい合ってお昼を食べてたら祐子が睨むように俺を見た。
「ねえ、ニカってあの人のことが好きなの?」
「あの人?Aちゃん?」
「そう」
「…………」
祐子に言う必要があるだろうかと考えながら、味噌汁のわかめを箸で取る。
だけど俺はある方に舵を切る。
ある意味牽制だ。
「……好きだね」
「あの人既婚者って言ってなかった?」
「言ったよ」
「不倫は駄目じゃん」
「そんなの分かり切ってるよ」
散々言われてきたことだからもう響かない。
淡々と答えていく。
「別にどうにかなりたいわけじゃないから。祐子には分からないかもしれないけど、俺はあの人の弟として接して、あの人を笑顔にさせたいの」
「そんなの上手くいく?」
「上手くいかせるんだよ」
少し語気を強める。
これで少し自分の環境が変わることを祈って。
「だからもうあれこれ言わないで」
「……あっそ」
これで祐子は諦めてくれるだろうと俺はこの時甘く考えていた。
その日の帰り、外は雨が降っていた。
今日はAちゃんと帰れる日。
今日はAちゃんは傘を持っていたので相合傘ではない。
「最近天気悪いね」
「梅雨だからしょうがないよ。ここんところ部屋干しが続くね」
「母ちゃん嘆いてた。部屋干しじゃやっぱり匂いが気になるみたい」
「私も。対策の洗剤使ってるんだけどね」
雨は結構降っていて、雨が傘にぶつかる音が響く。
Aちゃんとの会話も普段より大きい音量で話してる。
「それにしてもじめじめしてて蒸す」
俺はパーカーの袖を捲る。
この時期は湿度が高いけど、半袖になるには少し早い気がするんだよね。
「だね」
そういうAちゃんはぶかぶかのパーカーの袖がそのままだった。
「Aちゃん暑くない?」
「平気平気」
俺はなんだかそこに妙な違和感を持った。
第六感としか言えないんだけど。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時