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「ニカ」
俺のバイト先のファミレスに美月がやって来た。
多分記憶にないから初めてだった。
そして美月と会うのはあの日以来だった。
「バイトいつ終わる?」
「あと1時間ぐらい……」
「じゃあここで晩ご飯食べようかな」
「席案内するわ」
美月を席まで案内。
ぶっちゃけ気まずい。
なんとかバイトを終えて美月の席に行く。
美月はドリンクバーのアイスティーを飲んでいた。
「お待たせ」
「うん」
美月はコップを横にずらす。
「……こないだはごめんね」
「……えっ?」
なんと美月が謝ってきたから驚く。
「ニカの話を大して聞かず不倫は駄目だの一点張りで。そりゃニカだって滅入るよね」
「いや、その……」
あのときは自棄になっていて美月に八つ当たりをしてしまった。
日が経って冷静になってみると本当に申し訳ないことをしてしまったと思うようになった。
「……俺もごめん。八方塞がりで美月にぶつけちゃって」
「……でさ」
美月が窺うような視線を送る。
「ニカのこと私が知ってること、宮田先生に話しちゃったんだけど……」
「うん、いいよ」
宮は信用できるし、何なら宮と仲の良いあの先生たちに話してくれたっていい。
「それで宮田先生も北山先生とかに相談したみたいで……」
「構わないよ」
もう俺の気持ちは俺だけで留めさせることは無理だった。
色々な人の手を借りてこの気持ちの対処法を知りたかった。
「で、先生たちの結論に私も納得したんだけど」
「何?」
「その前に、ニカ、その人のことどうして好きになったの?」
「…………」
頭の中には再会してからのAちゃんの表情。
「……その人、Aちゃん、昔はもっと明るく笑ってたはずなんだよ。でも今は遠慮がちに笑って。旦那さんと上手くいってないみたいで、一回お宅にお邪魔したんだけど、家の中が冷たくて……」
「うん」
俺のまとまりのない言葉を美月は真っ直ぐ受け止めてくれる。
「Aちゃんにはずっと笑ってて欲しい。出来れば俺の手で……それは願っちゃいけない種類のものだけど……」
「ニカの想いは分かった。やっぱりね」
綺麗に笑う美月は大人だなと感じた。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時