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「どういう議題なの?俊くん」
「一ノ瀬の周りでな」
「端的に言えば一般的によろしくないとされる恋愛について」
俺が先ほどと同じトーンで言えば、横尾さんガヤさんもキタヤンと同じ反応をした。
「それはここで話せないね」
「店はどうする?個室がある所がいい?」
「だな。俺探しとくよ」
というわけで仕事が終わった後、4人でご飯に行くことになった。
場所はキタヤンが選んで焼肉屋さん。
焼肉奉行のキタヤンが俺たちに肉を乗せてくれる。
俺はビールを飲んで。
「禁断といえばガヤさんって本当によくバレなかったね」
ガヤさんは俺のクラスの元生徒で、美月ちゃんの友達、大沢さんと在学中から付き合っている。
二人は幼馴染で、最初ガヤさんから打ち明けられたとき本当に驚いた。
「受け持つ学年が違ったからそこまでの接点がなかったし、徹底的に学校では丸っきりの他人を演じてたから」
「宮田と一ノ瀬のようなことは考えなかったの?」
キタヤンがガヤさんの皿にタンを乗せながら訊く。
「文乃に絆されちゃって。だって万有引力には逆らえないじゃない?」
「俺たちに教えてくれたのもびっくりした」
横尾さんはクッパスープを飲んでいる。
「さすがに二人だけで抱えるのはね。この3人なら隠してくれると思ったから」
教師になって、この3人と出会ってもう6年。
俺はこの3人を信用してるし、3人も俺を信用してくれてるのを感じる。
「といってもそりゃ葛藤はあったよ。付き合う前から、今もあるよ。文乃を不自由にさせてないか、縛ってはいないかって」
「俺もあるや」
俺の呟きに年上二人も頷いた。
「やっぱよろしくないと判断される恋愛から始まってるからどうしても罪悪感があって」
「ミツも俺も時期によったらよろしくないと判断されてたかもしれないんだよね」
「というか人によっては勘繰るんじゃね?卒業した後偶然再会してそこから付き合うようになりましたって話素直に信じる人がどれだけいるか」
「それ俺も、卒業してから付き合うようになったと言ってもほんまかいなと思われるってことか。なかなかしんどくない?」
「俺も絶対文乃のことを怪しく考える人がいるじゃん……」
「9個下、10個下の年の差ってやっぱデカいんだな」
ほぼ同じ環境の俺たちの溜め息は揃った。
俺はホルモンを口に運ぶ。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時