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美月ちゃんの、まるでキャパオーバーですって顔久々に見た。
そして相談されたのは重たいことだった。
俺と美月ちゃんの関係だって、ニカの気持ちだって一般的にはよろしくないと判断する人が多い。
これはしょうがないこと。
何で美月ちゃんは応援したのに自分は反対されるんだと思ってしまうニカの気持ちは分かる。
でも美月ちゃんたちが良くないと判断することも正しい。
恋は万有引力。
しばしば俺たちが提唱する言葉。
俺たちは引力には逆らえない。
よって恋愛感情はどうにもならない。
そして無理矢理それにストップをかけようとするならば、逆に燃え上がってしまうもの。
だから禁断の恋が生まれてしまう。
美月ちゃんが知りたいのはバランスのかけ方。
一方的に反対はしたくない、だけどよろしくない恋愛。
さてどうしたものか……。
「何考え事してんの?」
職員室でそんなことを考えていたら、その声と一緒に出席簿で軽く頭を叩かれた。
「キタヤン」
「仕事?プライベート?」
「また恋のお節介をしようとしてる」
「そういえば玉森のをしたんだっけ。今は?」
「ニカ。二階堂高嗣」
「どんなもんなの?」
「一般的にはよろしくないと判断されるもの」
「おう……」
俺の少し低めの声の調子とそのワードにさすがのキタヤンも言葉を失ったらしい。
「一ノ瀬に相談されたんだ」
「うん。応援したいのに心からできないのが心苦しいみたいで。久々に彼女のキャパオーバーしてる顔を見た」
一番最初にそれを見たのは初めて彼女の秘密に触れた時。
あとはあのクリスマスの時とかご両親の離婚問題の時とか。
そんなときは俺の中の最大限の優しさを発揮させる。
そして美月ちゃんが笑ってくれればそれでいい。
「何か深刻そうな話?」
「俊くんが真顔だ」
横尾さんにガヤさんもやって来た。
するとキタヤンが。
「皆今日予定は?特に彼女たちとの」
「俺はないよ」
今日美月ちゃんは授業が詰まってるから会う予定はなかった。
週末に会うから問題はなし。
「俺もない。あっちが今日教習所で」
「俺も。彼女はバイト」
「かくいう俺も。金曜日は仕事が忙しいのよ。職員室じゃ話しにくいし、かといって生物準備室で立ち話するような議題じゃない。なっ宮田」
「あーうん。そうだね」
さすが情に厚い男、北山宏光。
俺の心を読み切っている。
確かにこの議題は居酒屋とかで話したいものだ。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時