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旦那さんってどんな人なんだろう。
辺りを見渡しても写真の類が見当たらないからマジで素性が分からない。
水沼のお父さんとお母さんにショックを受けさせて結婚したんなら、大切に扱うべきなのに。
そんなことをぐるぐると考えていたら。
「高嗣くんできたよ」
Aちゃんから声がかかる。
「ありがとう」
ダイニングテーブルに移動する。
テーブルの上に白飯、豆腐とわかめと玉ねぎの味噌汁、ロールキャベツ、焼鮭、きんぴらごぼうが並べられる。
「お野菜片付けたかったの?」
「うん。これで片付けられた。明日買い出しに行かなきゃ」
「いただきます」
「どうぞ。召し上がれ」
まずはロールキャベツを割って口に入れる。
「……どう?」
「美味しい」
「ほんとに?」
「本当だって。嘘言ったってしょうがないじゃん」
「ありがとう」
Aちゃんの手料理を食べるのは初めてだった。
天は二物を与えずって嘘だと思ったから、俺は思わず。
「Aちゃんの料理を毎日食べられるなんて旦那さんは幸せ者だな」
自分の傷を抉るようなことをどうして言っちゃうのかな、俺。
すると向かいのAちゃんの表情も暗くなった。
もしかして毎日は食べてないのかななんて思ってたら、その表情は持ち直した。
「高嗣くんのお口に合って嬉しい」
Aちゃんは笑顔が似合うのに。
旦那さんの話になるとその表情が曇る。
やっぱり夫婦仲は良くないのかなとか思ったけど、思うだけに留めた。
Aちゃんの手料理を美味しくいただいた後はすぐに帰った。
あまり長居しちゃうのは色々悪いから。
帰宅していく中で、だったら俺と、という想いが何度も浮かんだが、その度に打ち消した。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時