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「でしょ。で、ニカは結婚ショックで学校休むくらいで。今までは黙ってニカのすることを見てたんだけど、ショックにつけ込んで結構咎めたんだ。そしたらニカはすっかり改心して今に至るってわけ」
「今のニカは千ちゃんが出したんだ」
「というより悪さをやってたニカを消したって感じ」
千ちゃん凄いなと感心する。
二人の物語をもっと知りたいけれども今は。
「ニカさ、初恋の人の話してるとき、まだ思い出にできてないんだなと思ってたんだよね」
「俺もそう思った。だからあのとき俺謝ったんだよね」
「なるほど……」
ニカの気持ちはずっと眠っていたままだった。
再会したことにより起きてしまった、そう感じた。
「そういえばタマさ」
「何?」
「ニカが美月のこと好きだったの、察してた?」
「……えっ」
千ちゃんのびっくり発言に身体が固まってしまった。
「さすがにタマも分からなかった?」
「うん……」
でもニカの高校の様子を脳内で探ってみる。
ニカの目線は……。
「考えてみれば……かも」
「ニカのことだからタマの気持ちを察して、美月の気持ちを知ってって感じだと思うんだよね」
「そんなことしなくていいのに」
ニカはそうやって変なふうにも優しいんだから。
「美月って俺たちの姫って感じだもんねえ。かんなも文乃もそういう節があるし、タマとニカの気持ちは分かるよ」
「あいつは宮田の姫よ」
「そうだった」
千ちゃんから濃い話を聞いてなんだか胸に詰まる。
千ちゃんは時計を見た。
「あーそろそろ準備しないと。ごめんね」
「ううん。こっちこそごめん。それで千ちゃんはニカの件どう思う?」
「今は……ニカを信じて見守るしかないかな。もちろん不倫は間違った方向だし」
「かんなと文乃には伝える?」
「俺はかんなに言うかもしれない」
「じゃあそういう方向で」
千ちゃんに話しといて良かったと思った。
俺と美月だけじゃとてもね。
千ちゃん経由でかんなに伝わって、文乃にもし会ったときには伝えとくのもありかな。
これは皆大っぴらにするような性格じゃないからできることである。
重たい荷物は6人で持つ。
これが俺たちの中のルールになっている。
美月にこのことを伝えておこうと思いながら千ちゃんの家を後にした。
引き止めるのも愛情。
これが正しいと俺はこのときそう思っていた。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時