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「そっか美月は知らないのか。前に男3人で初恋の話をしたのよ。俺は藍ちゃんの話をしたんだけど。ニカは隣の家に住んでた幼馴染のお姉さんがそうらしくて。そしたらなんと最近その人と再会したんだよ。その人がこの春からニカの大学の食堂で働き始めたらしくて」
「へえ〜」
美月の目が輝き始める。
「ニカ、そういうことがあったなんて。水臭いなあ。教えてくれたら良かったのに」
「言えるかよ」
赤くなった気がする頬を冷ますようにコップを頬に当てる。
「で、どうよ」
「どうよって……」
タマは知ってんじゃん、Aちゃんが結婚してることを。
「どうも何も、会ったら話すぐらいだよ」
「はい、嘘ー」
タマにきっぱり言われてしまう。
「ニカの初恋話聞いたときに、初恋を思い出にできてないなと感じたの。そこで何の運命か再会して交流したらさ、ニカの中で何かが始まるでしょ」
「…………」
タマも千賀も何だろう。
俺が分かりやすいの?
「でも不倫は駄目だよ」
「分かってるよ」
言われなくても分かってる。
なのに身体は握り拳を作っていた。
「不倫なの?結婚されてるの?」
「してる。俺が中3の時には」
「その方おいくつなの?」
「今年25。俺の5つ上」
「若くしての結婚なんだね。丁度私たちと同じくらいか」
美月に言われてハッとする。
あの頃のAちゃんの年に俺はなるのか。
「そう考えたら早いよなあ。考えられない」
「私も想像できない」
あの頃のAちゃんはどういう気持ちだったんだろう。
予期せぬ妊娠だったけど嬉しかったのだろうか、でも親父さんには猛反対されて辛かったのだろうか、死産になってしまったときの悲しみは到底想像できない。
「そこに至るまでの過程は探らないけど……タマと同様、不倫は駄目だよ」
美月にも正論を言われる。
だけど一度自覚しちゃったらどうしようもないのが恋心じゃん。
でも分かってるよ、そんなこと。
「大丈夫。どうにかしようとか思ってないから」
正論言われたらこう返すしかないじゃん。
それでも俺だったらって思うのは構わないでしょ?
そう自分に言い聞かせて俺は食事の続きをした。
担々麺は少し伸びていた。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時