13 ページ13
・
Aちゃんが心配のまま、もうすぐゴールデンウィークが始まる頃になってしまった。
今日が午後から雨が降っていた。
俺は母ちゃんに傘を持たされたから難を逃れたけど、大学内でも傘を持ってない人が数多くいた。
「Aちゃん」
今日の授業が終わり帰ろうとしたら、本館の所にAちゃんがいた。
「あっ高嗣くん……」
「傘持ってないの?」
「天気予報で降るかもって言われてたのに忘れちゃって」
「家まで送ろうか?」
この雨がいつまで続くか分からないけど、こんな所で待つよりは良いと思う。
「えっ悪いよ」
「ここでいつ止むか分からない雨を待つより俺が送った方がいいでしょ」
「高嗣くん濡れちゃわない?」
「そんなの覚悟の上。今日旦那さんは?」
「普通に仕事」
「じゃあ早く帰っておかないと」
「でも……」
「いいから」
俺は自分の傘にAちゃんを入れた。
相合傘はある程度の憧れがあるよね。
まずは大学から駅まで。
俺の右側がなんだか熱い。
「高嗣くんバットくれたでしょ。松添さんから渡されたよ」
「うん。防犯に使って」
「心配性。でもありがとう」
「どういたしまして」
俺は昔を思い出した。
Aちゃんと地元の公園に行って、Aちゃんが四つ葉のクローバーを探してた。
俺も一緒に探して先に見つけた。
それを渡すとAちゃんはありがとうと言ってくれた。
その時の笑顔と一緒だった。
「松添さんと交流あるの?」
「うん。松添さんの娘さんと私が同い年らしくてお家に招いていただいたしご実家が米農家さんらしくて、お米をお裾分けしてもらったり」
松添さんは多分優しさや心配から俺に声をかけたのかなと考えた。
多分Aちゃんのことを娘のように思ってる。
少なくとも交流している人がいて良かったと思った。
駅に着いて電車に乗る。
窓の外を見ても空は鉛色で止む気配はない。
Aちゃんの降りる駅に自然と降りる。
今度は駅から彼女の家まで。
自分の左側とリュックが濡れてるけど、そんなの構わない。
あのマンションまで送れるのかなと思った。
だけどもうすぐマンションが見える曲がり角の前でAちゃんは立ち止まった。
俺も止まる。
・
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時