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次の日は土曜日だった。
バイトは夕方からだったので、どうしてもAちゃんの様子が気になった俺は外出した。
住んでる所は実は以前に聞いていたのでAちゃんの家へ向かえる。
途中おもちゃ屋で木製のバットを買って、綺麗にラッピングされた物を片手に抱える。
これなら怪しくないでしょ。
Aちゃんが住んでいるのは10階建てのマンションだった。
いつ頃から住んでるのかは分からないけど、なんとなく新築から住んでる感じはしなさそうだった。
堂々と正面玄関からマンションに入る。
管理人さんが入るようなマンションだった。
オートロックと人の目で一応二重のロックがあるのか。
ポストをサッと見て部屋番号を確認する401号室だった。
オートロックのボタンの401を押す。
だけど呼び出し音を押しても応答はなかった。
どこか出かけてるのかなと思い引き返そうとしたら、後ろに俺の母ちゃんより少し上なご婦人がいた。
「あっすみません、どうぞ」
咄嗟にそう言って譲ろうとしたら。
「あなた、浅野さんにご用事?」
「えっと……そうですけど……いないみたいですね」
「私402号室の松添というんですけど」
「松添さん……」
俺らの親世代の人ってやけに積極的な人がいるよなと戸惑う。
「Aちゃんは多分外出してるわ。旦那さんは出張中かしら。本当かどうか分からないけど、昨日は静かだったわ」
「えっと……」
このマダムは俺のことを何だと思ってるのか、何が言いたいのか、混乱する。
「あら、ごめんなさい、私ったら。息子にも母さんは口が軽いって注意されてるのに」
「えっと、俺は二階堂と言います。浅野Aさんとは幼馴染で交流があって……。俺この後予定があるのでこれをAさんに渡してもらえますか?」
「分かりました。Aちゃんにお客様、お母様以外で初めてだわ」
所々気になるワードを残すマダムに俺はプレゼントのバットを渡し、その場を去った。
推察するに、お隣さんとはそれなりに交流がありそうだ。
勝手に詮索されてるだけかもしれないが。
母親の話から水沼のお母さんとは仲が良いが、お父さんとは疎遠のようだ。
Aちゃんは友達が多い印象だったけど今はどうなんだろう。
そして本当に旦那さんに大切にされてるのだろうか。
色々気にかかることがあって、俺はやはり心配になってしまった。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2022年9月25日 10時