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「真面目に生きすぎることのつまらなさなんて先生には分かりませんよ」
「一ノ瀬さんは本当にそういう理由で街に出てるの?」
「そうですよ」
さっきから宮田先生の三白眼を向けられて落ち着かない。
怒られてるのは分かってる。
けど反省するかと言われれば。
「一ノ瀬さんのこと分からないな」
「分からなくていいですよ」
「それじゃ駄目。一ノ瀬さんがこの高校に入って良かったと思ってもらえない」
「はい?」
もうすぐ私の家に着く。
駄目だ、宮田先生のペースに巻き込まれてる。
何の気なしにテリトリーに入ってこられても困る。
「はい、到着」
家に着いてしまった。
コンクリート造の2階建ての一軒家はひっそりとしている。
「前送ったときも思ったけど……」
先生は私の家を見上げる。
その横顔が綺麗だなと見上げていたらバチッと目が合った。
私が今まで感じていた部分はどこかへいった。
「まあそれはおいおい。今日はもう遅いしね」
「そう……ですね」
いや話す気はないんだけれども。
いち早く家に入りたかった。
「じゃあ、おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
私が家に入るまで宮田先生は家の前にいて、私は逃げようがなかった。
ひっそりとした我が家。
真っ暗な玄関で私は思わずしゃがんだ。
私は怖いのだ、探られることが。
だから仮面を被って、根っからの真面目な気性もあるけれど、優等生の仮面もまた重ねて。
なんだかよく分からないけど涙が出てきた。
普段が全部上っ面ってわけじゃない。
だけど本当の私を知られるのがとても怖かった。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年7月6日 11時