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「自分ではよく分からないけど、でも大学時代からこの仕事に就きたくて今もこの仕事をやれているんだからその才能はあるんじゃないかな」
私の才能って何なんだ?という疑問が頭の中を駆け巡り気落ちしそうだ。
「一ノ瀬さん才能のかたまりだと思うんだけど」
「えっ?」
今度は私が目を丸くする番。
「まずは根が真面目なところ。街に出るときだって君は明日のことを考えて出てた。その後のことは感心できないけど。……あれからやってないよね?」
「やってません」
あれから街に出るときはあってもカラオケやゲーセンで留めてる。
お兄さんたちの交流は断った。
十分すぎるお金はあるし。
「ならいいんだけど。あー話が脱線したね。根が真面目だから目の前のことをコツコツとこなす。勉学にしても学級委員の仕事にしても。それって立派な才能じゃない?」
「でもそれって与えられたものをこなすだけで、自分の意志であってそうじゃないと思うんです」
「それだ」
「えっ?」
先生は快活な笑顔を見せる。
「一ノ瀬さんは自分の意志を持ってみようか。言われたからとかやらないといけないからやるんじゃなくて、自分がこれを心からやりたいのかをジャッジするの。……あっ俺の所に相談に来てくれるのは君の意志でしょ?それを積み重ねてみようか」
「あっ……」
改めて考えてみたら自分の意志でやってることって結構あるんだなと気付く。
目から鱗がポロポロと落ちていく。
学級委員だって友人たちだって今だって私は選んでる。
「そうすれば自分の才能が何なのか、自分が心からやりたいことは何なのか見えてくると思うよ」
また一歩前向きになれた気がした。
「だから自分には才能がないって卑下しないで。君には物事をこなす才能があるし、メイド服だって少し派手めな格好だって似合ってた」
「ん?」
なんだか方向性が違わないか?と思ったけど、先生のその勢いにクスクス笑ってしまった。
「先生も自信持って下さいね」
「あーそうだね」
私の前じゃそんな感じは影を潜めてるけど、教室じゃまだ頼りなさげな感じがするから。
少しずつ自己肯定力を高めていこうと思った一幕だった。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年7月6日 11時