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「失礼します。さようなら」
「さようなら」
一ノ瀬さんが去り、一人になった準備室。
俺は溜め息をついた。
一ノ瀬さんは頼りになる学級委員なんだけど、一緒にいるとどうもこっちが弱ってしまう。
あの時もそうだった。
職員室に行ってもつい溜め息を出してしまい、隣の北山先生、向かいの横尾先生、斜向かいの藤ヶ谷先生に見られた。
「俊くんどうしたよ」
「幸せ逃げちゃうよ」
「どうしたよ、宮っち」
キタミツに肩を叩かれる。結構痛い。
この3人の先生とは年が近くてお世話になっている。
特に3つ上のキタヤンには新任のときに色々教えてもらった。
「北山先生って一ノ瀬さんが1年のときの担任でしたっけ」
「一ノ瀬Aがどうかした？」
「いや、少し気にかかることがあって」
「あいつは……食えない奴だな」
「そう？絵に描いたような優等生じゃない？」
横尾さんがそう言うと。
「でも少し感情が乏しそう？」
ガヤさんも意見した。
「そうね。一年のときも一緒にいる奴はいたけど、今は？」
「今は玉森や千賀、二階堂といった目立つ子たちと一緒にいます。楽しそうにしてるけど聞き手に回ってる印象がありますね」
「まあ気になるんだったらしばらく注視しときな」
まとめたキタヤンはまた俺の肩を叩いた。
だから結構痛いんですって。
俺は去年からクラス担任をするようになって、一ノ瀬さんとは今年から深く関わるようになった。
学級委員だから絡みはあるけれど、なんだか実像が掴めないでいる。
とりあえずキタミツの言う通り、しばらく注視しておこう。
そう結論付けて俺は生徒の提出物をチェックし始める。
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作者名：ユタカ２ x他1人 | 作成日時：2021年7月6日 11時
