舞祭組短編集 (ページ18)

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記憶を失った彼千賀健永 (後編) ① ページ18

横「入るぞ。」

千「おぅ...ワッター。」

横「差し入れだ。俺の彼女が作ったシフォンケーキだ。」

千「へぇー。ワッターって彼女いたんだ。」

『こんにちわ。渉の彼女の進藤Aです。』

千「君...ワッターの彼女だったんだ。」

『...千賀くんって呼んでもいいですか？』

横「健永!!俺らやお前の両親が来れない時...俺の彼女が...お前の看病に来てくれるってさ。」

千「えっ??そんなん悪いよ。ワッターの彼女だろ？」

『気にしないで下さい。どうせ、部屋にいてもやることが無いんで!!』

横「それじゃ...A。頼んだぞ。」

『うん。気をつけてね？』

そして...病室を出た横尾。

藤「渉。Aちゃんは??」

横「俺の彼女として...健永の傍にいる。」

藤「そっかぁー。けど、Aちゃんも辛いよな？」

その日から、Aは、渉の彼女として毎日...千賀の看病に来ていた。すると...

『千賀くん。花屋さんで綺麗なお花が売ってたから、買ってきたよ。』

あ「こんにちわ。」

『初めまして...』

千「彼女は、ニカの恋人なんだ。あずさちゃんって言って...お見舞いに来てくれたんだ。」

あ「高嗣から、聞いてるわ。千ちゃんの彼女の進藤Aちゃんよね？」

千「はぁ？あずさちゃん。違うよ！Aちゃんは、俺の彼女じゃなくて、横尾さんの彼女だよ。」

あ「えっ...でも...。」

『多分...ニカちゃんが勘違いしてるんだと思いますよ？私は、横尾渉の彼女ですから。』

あ「そうだったの??」

『私...お花のお水...変えてきますね？あずささん。ごゆっくりして行ってください。』

と言って...花瓶を持って、健永の病室を出たAは、女子トイレの洗面台で泣き崩れた。

千母「Aちゃん？どうしたの？」

『お義母さん...。私、もう...無理です。彼の記憶が戻ってくれるって信じても...どうしたらいいの分からないんです。』

泣きながら、健永の母に訴えるAを優しく抱きしめる健永ママ。

千母「Aちゃん。ごめんなさいね。ダメな息子で...。」

『私、帰ります。』

Aは、花瓶を健永のお母さんに渡して、病院を後にした。
Aが、毎日...健永の看病に来ても一向に記憶が戻らない事に、辛さを感じたAは、その日から、健永のお見舞いや看病に来なくなったのだ。

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