宏光ストーリー 19 ページ19
昨夜は、あれからどうやって家まで帰ったのか、ほとんど覚えていない。
いつものように北山さんとタクシーに乗り込み、家まで送ってもらったはずなのだが、車内で何を話したのか全く記憶にないのだ。
今日は、1人でバラエティ番組の収録に臨む藤ヶ谷さんの現場に付いている。
今日北山さんに会っていたら、私は挙動不審で変な女だと思われていただろう。
偶然のスケジュールだが、その偶然にただただ感謝するしかない。
「さやか! さやか!」
誰かに呼ばれる声がしてふと我に返ると、目の前に藤ヶ谷さんが立っていた。
「藤ヶ谷さん!? え? あ、お呼びですか?」
「お呼びですよ! 水、頂戴!」
「あ! お水ですね! すみません」
どうやら収録はいったん休憩に入ったらしく、他の出演者の方も談笑したり水分補給をしたりしてリラックスしている。 私は急いで手にしていたペットボトルを藤ヶ谷さんに渡した。
「ったく、どうしたの? 今日は1日中“心ここにあらず”って感じだよ。ずっと空を見つめて考え事してるみたいに動かないし。なんかあった?」
昨夜のことが頭から離れずに仕事に集中できないなんて、口が裂けても言えない。
「ま、いいけどさ。何か悩んでることあったらいつでも言いなよ。 今は主に北山に付いてるけど、さやかはキスマイの担当マネージャーなんだから。 話くらいはいつでも聞くよ」
私より15cm程背が高い藤ヶ谷さんが、腰を折って私と視線を合わせ、優しく微笑む。
藤ヶ谷さんは本当に優しい。
大事な話をするときは必ず視線の高さを合わせてくれる。
仕事中に困っていると必ず声をかけてくれるし、アドバイスも的確だ。
楽屋ではいつも読書をしていて自分の世界に浸っているのかと思いきや、常にメンバーやスタッフのことを気遣ってくれる。
対して北山さんの優しさは、男らしいというか一見そっけなく思える言動の中に実は優しさがたくさん詰まっている。
分かりやすく気遣ったり、優しい言葉をかけてくれるというより、そっと背中を押してくれるような優しさだ。
相談すれば親身になって聞いてくれるけれど、自ら聞き出そうとはしない。
その代わり悩んでいる時や落ち込んでいる時は、決まって食事に連れ出してくれる。
きっと北山さんは照れ屋さんなんだろうな、と思う。
面と向かって褒められたり感謝されるとよく困ったような笑顔になる。
水を飲む藤ヶ谷さんを眺めながら私は北山さんのことを考えていた。
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SaYaKa - lovemitsu917さんありがとうございます!更新頻度は遅いですが、頑張って更新していきますので、また是非読んでやってくださいね! (2017年4月14日 2時) (レス) id: 81f34fd2ba (このIDを非表示/違反報告)
lovemitsu917(プロフ) - 続き楽しみに待ってま〜す (2017年4月6日 21時) (レス) id: f7579378d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2017年3月16日 19時