宏光ストーリー 18 ページ18
「北山さん、ご馳走様でした。いつもすみません」
財布をズボンのポケットにしまいながら店から出てきた北山さんに改めて声をかけた。
「おう!いいのいいの!」
いつも、何でもないことかのように、北山さんはそう言ってくれる。
「じゃ、行こうか」
そう言われて、タクシーを捕まえるため2人で大通りへと足を進める。
今日は我ながらずいぶん喋って笑ったし、食べたし、とにかく呑んだ。
北山さんもいつもより多めに焼酎を呑んでいたような気がするから、2人ともだいぶ酔っぱらっている。
「おい、そんなとこ歩いてると転ぶぞ」
私が道端にあるレンガ造りの花壇の上に乗りバランスを取りながら歩いていると、北山さんが心配そうに傍に寄って来てくれた。
「大丈夫ですって!小さい頃学校帰りとかに、こういうの見つけると登らずにはいられなかったんですよね〜。こうやって手を広げてバランスを取りながら・・・あ!」
いつもなら何てことないのに今日はかなり酔っているせいかバランスを崩して花壇から落ちそうになる。
(あ、やばいかも・・・)
転ぶのを覚悟して目を閉じると、コンクリートの堅い地面ではなく、温かく柔らかいものに包まれた。
「あっぶね〜。だから言っただろ!怪我するとこだったぞ」
そんな声が頭上から降って来て、ようやく北山さんに抱きしめられていることに気づいた。
「す、すみません!私酔ってて・・・あ、ありがとうございます」
急に恥ずかしくなり、勢いよく北山さんから離れる。
「ったく心配させんなよ」
そう言って北山さんは私の頭を軽くポンポンと2回叩いた。
その瞬間、私の体は突然、3度くらい体温が上がったように熱くなり、心臓がその存在を主張するかのように激しく鼓動を刻みだした。 北山さんに抱きしめられた感触は少しも変わらず私の腕や背中に残り、触れられた頭はまるでその部分が甘く溶けそうな感覚に襲われた。
頭と体と心がバラバラになったように感じ、頭では動け、と思うのに体が言うことを聞かずその場に立ち尽くすことしかできない。
動かない体とは裏腹に、心は熱と甘さと痛みを伴い、激しく揺れ動いていた。
「さやかどうした? 行くぞ」
歩き出していた北山さんが私を振り返り声をかける。
その声を合図に、突然金縛りが解けたように体が動く。
「あ、はい。今行きます」
そう答えるのが精いっぱいで、私は急いで北山さんの元へと走った。
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SaYaKa - lovemitsu917さんありがとうございます!更新頻度は遅いですが、頑張って更新していきますので、また是非読んでやってくださいね! (2017年4月14日 2時) (レス) id: 81f34fd2ba (このIDを非表示/違反報告)
lovemitsu917(プロフ) - 続き楽しみに待ってま〜す (2017年4月6日 21時) (レス) id: f7579378d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2017年3月16日 19時