Episode21 【宏光side】 ページ21
「本当に、ごちそうさまでした」
店を出ると、Aちゃんは俺に深々と頭を下げた。
ホント律儀で真面目だなと、自然と笑みがこぼれる。
「Aちゃんって、確か家この辺だよね？送るよ」
そう言うと彼女は頭を左右にブンブン振りながら「いえいえ。大丈夫です」と言った。
「でももうこんな時間だし。女の子１人で帰すなんて危ないでしょ」
「大丈夫です！１人で帰れます！ここから歩いて15分くらいだし。北山さんは明日もお仕事でしょ？早く帰って休んでください」
「ダメ。送る。悪いけど俺、頑固だから。言い出したら聞かないタイプなんでね。観念してください」
「でも…」
「ほら、行くよ」
俺はためらう彼女の手を引き、歩き出す。
「え…北山さん…？」
「家、こっちでいいの？」
「あ、はい…」
彼女は諦めたのか抵抗せず、大人しく歩き始めた。
昼間はむせ返るような暑さだったが、さすがにその暑さはなりを潜め、わずかだが気持ちいい夜風が吹き抜ける。
５分ほど歩いたところで、Aちゃんが「あの･･･」と切り出した。
「ん？」
「さすがに、これはちょっとまずいと思うんですけど･･････」
視線の先には彼女の右手をしっかり握る俺の左手。
「ああ･･･ごめん」
慌ててその手を離すと、彼女は「いえ･･･」と呟いた。
何となく２人の間に気まずい空気が流れる。
無言のまま俺たちは肩を並べて歩いた。
もともとあまり親しくない人と２人きりになるというシチュエーションは得意ではない。
何か話さなきゃと思うけれど、なかなか言葉が出ないまま、ただひたすらに歩いた。
「北山さん」
突然名前を呼ばれて彼女を見ると、俺たちの左側に建つアパートを指さして「ここです」と言った。
それはライトブラウンの壁面に白い窓枠が印象的な２階建てのアパートだった。
「送ってくれてありがとうございます」
「いや。全然･･･」
それ以上言葉が続かず、俺は必死に言葉を探した。
(くそ〜。こんな時、玉や藤ヶ谷ならカッコいいセリフが出てくるんだろうけどなぁ)
考えれば考えるほど、何と言ったらいいのか分からない。
「それじゃ、おやすみなさい」
そう言って微笑むと、彼女は俺に背を向け歩き出した。
「あ！Aちゃん！！」
とっさに呼びとめる。
「来週のライブ、楽しみにしててよ。俺、頑張るから」
「はい！頑張ってくださいね」
手を振ってアパートへと走り出した彼女を見送り、俺は改めて気合を入れ直した。
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SaYaKa(プロフ) - yndreamv0mm0vpqさん» コメントありがとうございます!!たくさんドキドキしてもらえるように頑張ります^ ^ (2018年8月2日 7時) (
レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
yndreamv0mm0vpq(プロフ) - 今後の展開がすごく気になります。2人はどのようにして再開し、恋に発展して行くのか。ドキドキ。楽しみにしています。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 59b8f94fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SaYaKa | 作成日時：2018年7月31日 1時
