Episode16 【宏光side】 ページ16
「私、そろそろ帰ります」
Aさんは立ち上がり荷物を掴んだ。
「あ、じゃあ、送るよ」
そう言いながら俺も立ち上がると、彼女は微笑んで首を横に振りながら制した。
「北山さん、まだ飲み物もお料理も残ってるじゃないですか」
「いや、でもこんな時間だしさ・・・」
「平気です。ここからそう遠くありませんから。北山さんは、もうちょっとゆっくりしててください」
そう言うと彼女は春子さんのいるレジで支払いを済ませた。
「あ、ねぇ!また、会えるかな?」
慌てて引き止めるように声をかけた俺に、彼女はふわりと微笑んで、頷いた。
「はい。おやすみなさい」
「あ、うん…。じゃあまた来週、ここで!おやすみ」
俺は立ち尽くしたまま彼女が店を出るのを見送った。
「はぁぁぁぁ…」
改めてカウンター席に腰を下ろすと、盛大なため息が漏れた。
「あらあら、北山くん。珍しいわね。ため息なんて」
ついさっきまでAさんがいた席を片付けながら春子さんが言う。
「俺、何か気に触ること言ったかな…。だから帰っちゃったのかも」
「そんなんじゃないわよ。Aちゃんはいつもお酒1杯しか飲まないのよ。1杯飲み終えたら帰る。ただそれだけのことよ」
「そうなんだ。何か、彼氏いるっぽいしね」
口にした途端、心臓が誰かに掴まれたようにギュッと痛んだ。
きっとあのハンカチは、彼氏にもらったんだろう。
もしかしたらデートの終わりに、2人でお揃いで買ったのかもしれない。
でも俺には彼女の表情が気になって仕方なかった。
ハンカチを受け取った彼女は、嬉しそうにも見えたし、困っているようにも見えたからだ。
そしてその表情から、初めて会ったあの日のひどく悲しそうな彼女を思い出した。
だけど本当のところは分からない。
「あーーー気になるっ」
店に入ってきたサラリーマンたちの賑やかな話し声に紛れるように、1人うなった。
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SaYaKa(プロフ) - yndreamv0mm0vpqさん» コメントありがとうございます!!たくさんドキドキしてもらえるように頑張ります^ ^ (2018年8月2日 7時) (レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
yndreamv0mm0vpq(プロフ) - 今後の展開がすごく気になります。2人はどのようにして再開し、恋に発展して行くのか。ドキドキ。楽しみにしています。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 59b8f94fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2018年7月31日 1時