本懐の果て (ページ46)

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※第４４話 side：降谷ページ46

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「俺にも大事な人が居たんです」

ふいに高崎が呟いた。

養父のことだろうか？

だが調べた限りでは、彼の養父は亡くなって十年近く経つ。

僕はそれを知っている。
今更切り出すことではない。

彼の雰囲気からして、もっと最近。
数年内に亡くした人のことだろうか。

「俺にとって兄貴みたいな存在でした」

生きていれば、僕と同じ29歳。

ギターが好きで、高崎がパソコンを弄っている隣でよく音楽を奏でていたらしい。

「この外套も、その人からの最初で最期のプレゼントなんです」

脳裏に過る、今は亡き友の姿。
懐かしさに目を細めた。

冬の気配が近づき始めた頃ーー

『なぁ、バーボン。ちょっと相談』

『今じゃなきゃ駄目なんですか？』

『まぁ聞けって。自分の外見を気にし過ぎる奴に何をプレゼントしたら良い？』

『全く要領を得ないのですが』

肩を竦め、悪態を吐く。

ん～、と少し悩む素振りを見せた後、スコッチは深い溜め息を吐いた。

『・・・瞳の色を気にしてる。夜にフラッと出掛けることはあるんだけど、昼間はパソコンに齧り付いて離れない』

じきに雪が降るだろう季節。
これから夜はもっと冷えるだろうな。

『ーー外套、とか。目元を隠せるくらいのフードがついてる』

『なるほどなぁ』

うんうん、と頷く彼に苦笑を漏らす。

『参考になりました？』

『あぁ。助かった、バーボン。早速プレゼントしてみるよ』

今度、紹介するからな、とスコッチは満足そうな笑みを浮かべた。

結局、約束が果たされる事はなかった。

「ーーヒロ」

お前は高崎を知っていたのか？
会わせたかった相手は高崎なのか？

「安室さんは好きですか？スコッチ」

ぽつり、と呟かれた言葉に弾かれるように顔を上げた。
瞳に映る高崎は今にも泣き出しそうなほど、瞳が潤んでいる。

「っ、高崎」

「俺は、・・・好きだった」

まるで胸を抉られたような痛みが、身体中を駆け抜けた。

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