※第9話 side:コナン ページ11
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「俺に何か用?」
その言葉にハッとする。
気付けば彼の顔が間近にあり、俺の頭を撫でていた。
「あ、えっと・・・」
内緒話をするように、彼の耳に手を当てそっと顔を近付ける。
「お兄さんは悪い人?」
子供らしい口調と声音で問えば「ん〜」と唸り声が返ってきた。
「彼の仲間じゃないけど、いい人ではない、のかな」
のかな、って自分で分かんねぇのかよ。
「ははは、」
思わず苦笑が漏れた。
「それよりさ、あの抱えられてる女の子。・・・君の友達?」
彼の言葉にいち早く反応したのは、瞳に溢れそうなほど涙を貯めた歩美ちゃんだった。
「お兄さん、哀ちゃんを助けて!!」
縋るように抱き付いた歩美ちゃんに一瞬、呼吸が止まる。
すぐさま引き剥がそうと手を伸ばすが、彼は俺に向けたものとは違う柔らかい笑みで歩美ちゃんの頭を宥めるように撫でた。
「大丈夫だよ。最初から助けるつもりだったから」
「えっ?」
思いもよらない彼の言葉に目を見開いた。
彼は歩美ちゃんを俺に預けると、素早くその場に立ち上がる。
「何するの?」
鋭い眼差しを向け、低い声音で問いかければ彼は片頬を上げ、人差し指を唇に押し当てた。
「内緒」
そう答えて無精髭の男に向き直ると、彼はゆっくりとした足取りで歩き出した。
「く、来るな!!来るんじゃねぇ!!」
勢いよく刃物を振り回す無精髭の男。
彼は一定の距離まで近付くと立ち止まった。
一体、何をする気なんだ?
全く意図が読めない。
ごくり、と唾を呑み込んだ。
たとえ彼がどういう行動に出たとしても、いざとなったらこの時計型麻酔銃で。
気付かれないようにカバーを開け、腕を前に出し標準を合わせる。
一瞬の隙も逃さないように、注意深く彼の挙動に集中した。
緊迫する状況の中ーー
彼の酷く冷静な声が店内に響いた。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時