※第10話 ページ12
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肺いっぱいに酸素を送り込み、深く息を吐き出した。
目の前には刃物を振り回す無精髭の中年男と驚愕に目を見開いた少女。
両者を捉え、挑発するように片頬を上げた。
「あんたさぁ、恥ずかしくないの?」
「何なんだよ、お前。何言ってんだ?」
僅かに焦りの色を滲ませる無精髭の男に「だからさぁ」と呆れたように首の後ろを掻いた。
「こんだけの人が居るなかで、か弱い女の子を人質に選ぶとか」
言いながら、徐々に無精髭の男との距離を詰めていく。
「来るな、来るなよぉ!!」
無精髭の男が喚き散らす。
構わず歩き続けると、振り回していた刃物の先が俺に向いた。
「人として恥ずかしくないのか、って聞いてんだけど」
切っ先は目と鼻の先。
手を伸ばせば簡単に少女を掴める距離にまで詰め寄っていた。
「それとも、何?」
はっ、と鼻を鳴らし、嘲笑うような笑みを浮かべる。
「そういう趣味でもあんの?」
「っ、この!!」
これでもか、というほど顔を真っ赤に染め、逆上した無精髭の男が刃物を振り上げた。
出来た隙間に腕を伸ばし、少女を強引に抱き寄せると庇うように背を向ける。
振り下ろされた果物ナイフ。
脇腹に何かが沈められたような感触に眉根を寄せた。
身体を反転させた勢いで、無精髭の男を思いっきり蹴り飛ばす。
目深に被っていたフードが背中に落ち、目元以外が露になった。
元々、壁際だったこともあり、激突した無精髭の男は白目を向いてズルズルと床に倒れ伏す。
「もう大丈夫だ」
倒れた男から距離を取り、膝をついて抱えていた少女を床へ下ろした。
一連の動作を見ていた子供達が騒ぎ立てる中。
「まだだ!!」
目の前の少年ーー
江戸川コナンが張り裂けそうな声で叫んだ。
ーーガチャリ。
ほぼ同時に後頭部に感じた、固く冷たい感触。
「てめぇ、何て事してくれたんだ」
「何だ。やっぱりもう一人居たのか」
男の低く唸るような声音に肩を竦め、少女を庇うようにゆっくりと立ち上がった。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時