※第33話 探偵たちの夜想曲 ページ35
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「しかし、解らんな・・・」
なぜ男が探偵事務所を使ったのか?
なぜ樫塚さんとトイレに立て籠ったのか?
なぜコインロッカーに拘るのか?
自 殺に関しては、小五郎さんが「逃げ切れないと観念した」と言っていた。
それなら人質も道連れにしそうだけど。
じゃあ、何故そうしなかったのか?
第一、銃を持ってたんだ。
彼女を連れてこの場から逃げることだって、容易じゃないが出来なくもない。
「ちなみにお兄さんは何で亡くなったんですか?」
「・・・・・・」
安室さんの声が聞こえなかったのか、樫塚さんは無言のまま。
「お兄さんの死因は?」
今度は少し大きめの声で話かけた安室さんに反応して、樫塚さんは弾かれたように顔を上げた。
彼女、右耳が聞こえづらい?
銃声を間近で聞いて鼓膜が傷付いたのか?
「あ、はい・・・四日前に事故で」
これが兄ですけど、と見せられたのは笑顔で並ぶ男女二人の写真。
兄妹のみの写真、待受にするか?普通。
それに、この眼鏡の男。
今朝ニュースで騒がれていた銀行強盗の犠牲者。
銀行員ーー庄野賢也に違いない。
二人は本当に兄妹なのか?
樫塚さんの携帯が傷だらけなのも引っかかる。
妙なのは男の所持品も。
小銭が五千円近く上着ポケットに入っていたらしい。
「良かったらポケットの中に入っていた物、見せてもらえます?」
「あ、あぁ」
安室さんの申し出に、目暮警部が怪訝そうにしながらも了承した。
ついでなので、俺も見させてもらうことにする。隣に居たコナンも、ちゃっかり覗き込んでいた。
新品のスタンガンに新品の携帯。
煙草と傷だらけのライター。
相反する様相の物が混在していた。
ここに樫塚さんの傷だらけの携帯なら、しっくりくるんだけどな。
訝し気に見つめていたのは、俺の他には安室さんとコナンだけ。
ここまで来れば犯人は解りそうなものだけど。コナンが言い出さないのには、きっと訳があるんだろう。
とりあえず。
この場は何も言わずに、雰囲気に流されてみるか。
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月2日 21時