引退。【浦島坂田船】

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あの日、二人で飲みに行った。

お酒が得意じゃない彼と初めてグラスを交わったあの日。




「Aはなんで浦島坂田船に入ってんの〜？」

「それは、浦島坂田船がだいすきだから！」

「俺らはAのこと好きじゃないで。」



お酒が入ってるから、それも分かってた。

だけどそれが本心だとしたら、どうすればいいか分からなくなった。



「Aはみんなから嫌われてるんよ、知っとる？」



彼の性格は、誰からも愛される性格だ。

何を言っても憎まれない、憎めない、そんな愛らしい性格。




「…はよ抜けたら？邪魔」




髪の色に負けないくらい、頬を真っ赤にさせて私に可愛らしい笑顔を向けて語りかけるさかたん。



『あ、あ、した…月ラジだから！先帰るね！これお会計で！』



ばいば〜い、なんて呑気に手を振って私を見送ってくれるさかたん。


あの言葉もきっと全部その場のノリで、全て嘘なんだとは彼の声のトーンでわかった。








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