Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ17)

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Episode39 -7 ページ17

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目を見開いて驚いてる私を一瞥して二宮さんは笑みを深める。

「なんだ、気づかれてたか」

「俺とお前の付き合いだぞ。考えることくらい分かる」

「あはは、嬉しいこと言ってくれるね翔ちゃん」

ゆったりとした足取りで二宮さんは何歩か私たちの方へ歩み寄った。

「それで？間違ってるところは？」

「……うん。今のところ、否定する要素は浮かばないかな」

「……そうか」

それがつまり、翔さんの推測が正しいことを意味している。

二宮さんは大げさに肩すくめて見せた。

「俺が翔ちゃんを出し抜こうってのが間違ってたな」

「当たり前だ。お前が俺に勝てるわけないだろ」

「さっきまであんなに弱ってたくせに」

「うるさいな…」

にやりと口角を上げる二宮さんと、拗ねたように顔を背ける翔さん。

先ほどまでの張り詰めたやり取りとはあまりにも違う空気に私は置いていかれそうになる。

「…というかカズ、バレる様な方法選んだろ」

「………、まさか」

そう言った二宮さんは翔さんを見なかった。

もう用はないとばかりにくるりと踵を返す。

「じゃあ、今度こそ俺は帰るよ。また明後日ね」

足早に二宮さんは病室を出ていく。

その表情が涙をこらえているように見えたのは私の見間違いだろうか。

「A」

「はい」

名前を呼ばれて扉から視線を外す。

ぽんぽんと、翔さんがベッドを叩いている。

座れという意味だと理解して私はそこに座った。

「わっ」

次の瞬間、優しく抱きすくめられてバランスを崩す。

もぞもぞと動いて顔を見上げる。

翔さんは目じりを下げてひどく優しい顔をしていた。

「翔さん…？」

「ごめんな」

「………っ」

そんな言葉と共に抱きしめる腕が強くなる。

私は上手く言葉が浮かばなくて寝間着の胸元に頭を押し付けた。

背中に回した腕に力を込める。

くしゃり、肌触りのいい翔さんの寝間着が、あっけなく歪んだのが分かった。

ぽん、ぽん、と。

背中を一定のリズムで大きな手が撫でる。

しばらくの間、私たちは何も言わずに抱き合っていた。

ねじれていた日常がようやく元の姿へと戻ろうとしていた。

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