Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ32)

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Episode41 -8 ページ32

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離れたくない。

離したくない。

たぶん、私たちの気持ちは同じだった。

けれど唇が触れるだけ。

必死に相手の唇を求めながら、私たちは示し合わせたようにただその熱だけを享受する。

同じ気持ちだと分かるから、私はどうにか、滲む涙を飲み込んだ。

着替えた翔さんがボタンをすべて止めてしまうと覗いていた肌色も包帯の白色も完全に見えなくなってしまった。

「痕になってしまうんですよね」

「薄くはなる。大丈夫だ」

消えることはない、今回の傷跡。

私と翔さんを繋いでいる、確かな跡。

気にするなと言われても、私はこの先一生気にしてしまいそうだ。

翔さんが私に気にしてほしくないと思っていても、人の心はそう簡単には割り切れない。

「なぁ、A」

「はい」

「もっかい、キスしていい？」

「いいですよ」

返事をしたら頬に手が添えられた。

軽く、本当に触れるだけのキス。

柔らかなそれは一瞬重なっただけで離れていく。

愛しい人の顔がすぐそばにあって、その瞳に私が映っている。

もしかして今の私は、翔さんと同じ顔をしているだろうか。

「A、俺のことが好きか」

「好き、です」

迷うことなく答える。

翔さんの心が、まるで手に取るようにわかった。

それだけ私たちは深く想い合うことができたということだろうか。

それならば、こんなにも嬉しいことはない。

「そうか。じゃあ……」

沈黙なんてなかったのかもしれない。

だけど、その一瞬の間が長く感じられた。

「俺と別れてくれ」

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