Episode31 かわいそうな人 ページ34
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「えっ、押された！？」
「しー、雅紀くん声大きいってば」
数日後、お昼時の柚木はランチ客でそこそこ盛況である。
いつものようにカウンター席に座った私は雅紀くん相手に昨日の話を報告していた。
雅紀くんに向かって人差し指を口の前に持ってきて言いながら妙な既視感を覚える。
…あぁ、そうか、亜理紗ちゃんと同じようなやり取りをしたんだ。
なんだかずいぶん前の話のような気もするけれど、あれから三週間くらいしか経ってないなんて。
「それで、そのあとどうしたの？」
「……それが、翔さんは今日はもう仕事休めって言うもんだから、しばらく押し問答になって…」
「そりゃあそうでしょ。休んだんだよね？」
心配そうな雅紀くんの目に私は苦笑い。
「仕入れだけ行った。智さん一人だと大変だから」
「まさか一人で？」
「ううん。駅まで送ってもらうだけだった翔さんが全部ついてきてくれた」
「……そっか、よかった」
というか、私は一人でいいって言ったんだけど翔さんがそれを許してはくれなかった。
一緒にいてくれるのは心強いけれど翔さんの仕事に影響が出ないかが心配だ。
「でも、結局昨日と一昨日は智さんから休み命令が出て一日家にいたよ」
眉間にしわを寄せて「店長命令だ」と言った智さんは過保護な保護者みたいな顔をしていた。
翔さんと智さんにそろって休むよう言われてしまうと強がるわけにもいかなくて、私は素直に二日のお休みをもらったのだった。
「さすが大ちゃん、こういう時頼りになるな」
感心してる雅紀くんに私はそうだねと相槌を打つ。
智さんは基本的に私に対しては甘い人だ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
