Episode27 -6 ページ13
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「ごめんね、私もできればこんなことはしたくなかったんだけど」
そんな風につぶやきながら薄く笑った理子さんの前で私の身体は車の中へと押し込まれる。
リムジンと呼ばれるであろう黒塗りの車に身体が転がると、続けて理子さんが乗り込んできた。
「お疲れ様」
黒服の男性たちに一言声をかけると理子さんは車の窓を開けた。
外で押さえつけられている二宮さんの方を見る。
「戸羽さんを返せ！」
「取りに来てちょうだい、悪いけど」
こちらからでは二人の表情は見えない。
理子さんは一言だけ二宮さんに向けて告げると、窓を閉めながら運転席の方に向かって「出して」と指示を飛ばす。
車が走り出すとどうすることも出来ずその光景を見ていた私を理子さんが見やった。
身を乗り出して私のシートベルトを締めながら私の顔をのぞき込む。
「見張っててゴメンね。でも、私は拒否できないのよ」
「……最近付けていたのは貴女ですか」
「翔くんと過ごす時間が増えてたんだから感謝してほしいわね」
そんな風に笑うと理子さんは座席の背もたれに背を預けてしまった。
「少しかかるわ。大人しくしててね」
「私の鞄…！」
私の傍に転がされていた鞄を回収した理子さんが鞄の中を探る。
やがてその白い手がスマホを抜き出した。ネイルが綺麗に施された指が電源ボタンを押す。
「ごめんね」
もう一度、黒髪を揺らしながら理子さんが悲しそうな顔をする。
顔の傍で理子さんの手に握られたスマホの電源が切られたのがわかった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
