Episode29 -4 ページ24
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白くけぶる熱でさえ今は不安を溶かす役割を果たすだけで恥ずかしさにさらに浴室をけぶらせることもない。
すぐ隣に腰を下ろした翔さんと肩が触れ合っている。
恥ずかしくて仕方ないはずなのに、どうしてかひどく安心して私は翔さんの肩にもたれかかった。
「……積極的だな」
「そう……ですね……」
何と答えるのが正解かもわからなくて私はぼんやりと言葉を吐く。
弱い言葉はけぶる水蒸気にあっという間に混ざって上へ上へと逃げて行った。
「ほら、くっついてろ」
「あ…」
肩に腕が回されてぎゅっと抱き寄せられる。
胸元に頭を押し付けたまま、私は熱い息を吸い込んだ。
翔さんの身体がちゃんと鍛えられていたことも、片腕で肩を抱き込まれてしまうことも、あつい熱となって頭までめぐるけれど、それと同時に何かの糸が切れたように私は苦しくなって翔さんの肌にすり寄った。
「……くっついてろとは言ったけど、あんまりくっつかれるとあれなんだけど」
「…っ、すみません」
すこし身を引いたら強い力で引き留められる。
「いい。…俺も今日は、くっついてたい気分だ」
広いジャグジーの中で二人くっつく。
これだけくっついて、けぶった熱の空気を吸っても肺の奥が温まらない。
「……あの、翔さん」
「ん？」
名前を呼んだら息のような声が返ってくる。
しかしその先の言葉が続かなくて、つい黙り込む。
翔さんが手のひらで肩にお湯をかけた波が私の肩も一瞬だけ温めた。
「どうした？」
心配そうな翔さんの目が私の顔をのぞき込む。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
