Episode5 -6 ページ41
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なんにしてもほかにお客さんがいなくて助かった。
きっと今の私はひどい顔をしているに違いない。
あぁでも、この世で一番この顔を見られたくないのは櫻井さんなのに、その櫻井さんの前であの頃のことを思い出してしまった。
櫻井さんがどことなく心配そうな、険しそうな顔をして私を見ているのに気づいて、あわてて笑顔を作る。
「すみません、お客様にこんな話」
「いえ、聞いたのは俺ですから。安心してください、薔薇をプレゼントすることだけは絶対にありませんから」
「……そうですか」
絶対に、と強調する櫻井さんの声はなんとなく冷たかった。
いつも完璧な笑顔で百合を受け取っていく櫻井さんだけど、こんな表情もあるのかと思う。
それはとても人らしい、感情のこもった表情だった。
「でも、貴女との共通点があるってわかったのはラッキーでした」
「え」
「俺は嬉しいです。たとえ嫌いなものでも、同じものがあることが」
私を目を覗き込んできゅっと口角を上げると、櫻井さんは百合の花束を持ちあげた。
「長居してすみません。したくもない話をさせちゃいましたね。今度お礼と一緒にお詫びも持ってきます」
「そんな…櫻井さんのことが知れて、私は嬉しかった…です、よ…」
言いながら恥ずかしくなってしまって声が小さくなる。
それでも櫻井さんは私の言葉にふっと笑みをこぼして「俺もです」とつぶやくと片手をあげて店を出ていった。
櫻井翔さん、通称百合の君。
たぶん年上。
うちの店からほど近い繁華街にある有名なホストクラブのホストさん。
百合の花が好きらしい。
という櫻井さんについて知っていることに、私はそっと薔薇が嫌いということを付け足した。
思いがけない共通点に不謹慎にも少しだけ嬉しいと思う自分がいる。
けれど、櫻井さんにそれだけ強い痕を残している人がいるという事実が判明して、無意識のうちに私は息を吐き出した。
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iCHiKA(プロフ) - あまさん» コメントありがとうございます。前作からのお付き合い感謝いたします。習慣ですか！とても嬉しいです。引き続き楽しんでいただけるように頑張って執筆していきますね！お付き合いよろしくお願いいたします。 (2019年12月22日 17時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
あま - 前作から拝見させていただいています!!!更新が楽しみすぎて毎日寝る前にこのページをチェックするのが習慣になっています!!! これからも頑張ってください!!!! 楽しみにしてます!!!!! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 5287825b4c (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - 愛梨さん» コメントありがとうございます。前作も読んでいただいたとのことで、とても嬉しいです。面白いと言っていただけて大変光栄です！応援ありがとうございます、今作もお付き合いいただけますよう頑張らせていただきますね。 (2019年12月8日 17時) (レス) id: a52d40e8ad (このIDを非表示/違反報告)
愛梨 - 前作の「甘く、沈む。」から読ませていただいてます。とーっても面白いです。更新大変だとは思いますが、頑張ってください。応援してます。 (2019年12月8日 16時) (レス) id: 714c843cad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年12月7日 13時
