〇王子さまを待ち惚けて-Blue ページ49
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ガチャ、
部室のドアが開く音に勢いよく振り返ったら、
―え、なにごと？エリーちゃん―
「あっ、いえ……お疲れ様です」
？マークを浮かべる先輩に丁寧にご挨拶して、
すごすごと元の位置に戻る。
「……はぁ」
『この時間は空きコマやからだいたいおんで』って
聞いた気がしたんだけどな……。
いつもよりおっきめなバッグをだっこしながら、
部室の隅で丸くなる午後1時。
クシャッ、
あ、いけない！
大慌てでバッグを開けたら
リボンが崩れてないのを確認して、ほっと一安心する。
だって誕生日プレゼントだもん。
できるだけ綺麗に渡したいのも乙女心だと思うのです。
なんちゃって。
「はぁ……」
思い切ってLINEしてみる？
いや、そんな勇気があったら
そもそも部室で待ち伏せなんてしてない。
でも、正門先輩のお洋服に合いそうだなって
選んだベルトとポーチは
まだ出番が来ないからくたびれちゃいそうで。
―それ広報の資料？―
―はい、ひなちゃんの資料見やすくて助かります―
―あぁ見えて
―留年間近の虎丸と違ってね―
―ちょ、ヒドイって
辛口の香坂先輩にぶぅぶぅ言ってる虎丸先輩と
それを宥める鳴海先輩の話が聞こえてくる。
香「再履の講義ノート、正門から借りてるクセに」
虎「今日は自分で取ったって！正門おらへんかったから」
鳴「あれ、まっさん今日休んでるんですか？」
えっ？
聞き捨てならない台詞が聞こえてきて、盗み聞きモードを発動。
虎「いつも一緒におる映像研の子に聞いたら、
『今日は休むらしいですぅ』って言うてたで」
鳴「へぇ、まさか誕生日休暇やったりして(笑)」
香「正門今日だっけ？」
鳴「そうです。
昨日京都行ってる投稿してたから、そのまま泊ったんかも」
虎「え、1人？」
鳴「いや、それがですね？」
正門先輩の投稿を見たのか「あぁ、」って漏れる声に
思わず手をぎゅっと握りしめる。
多分、夜の紅葉を撮ったアレだと思うけど、
綺麗な石畳の写真には女の人の後ろ姿が映り込んでて。
それって多分、
虎「え、これユキちゃうん？」
香「私もそれ思った」
鳴「……ですよね」
……はい、私もそう思います。
だから、いいね！を押すのをためらって。
噂話に盛り上がる先輩方の声を聞きながら
クシャ、と音を立てるのもおかまいなくバッグを抱きしめて、
こっそり溜息を吐いた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
