・ ページ47
・
「正門、シャワーあがったよ」
濡れた髪を拭きながら部屋に戻ったら、
正門はぼんやりと俯いてて。
『欲動』を思い出すような表情に、
吸い寄せられるようにしゃがみこんだら自然と頬を撫でてた。
「大丈夫？」
良「ふふっ、……ちょっと考え事してただけやで」
アルコールで潤んだ瞳がとろんと微睡んで、
優しく髪を梳く。
良「ちゃんと髪乾かして、えぇ子で待っててな？」
少し掠れた、低くて、でも甘い声。
落ち着かせたはずの頬の熱が戻るのを感じながら
小さく頷いたら、
柔らかく微笑んで正門はお風呂場に行った。
「……はぁ、」
慣れないドキドキを持て余しながら
ベッドに横になって、疼く身体を抱きしめる。
「ふしだら、だな……」
誰の、何に対してなのか。
泡沫のように浮かんでくることを、今は知らんふりしていたくて。
ちょっとだけ、と
考えることを放棄して目を瞑った。
良「……き、結城」
緩く肩を揺らされて目が覚めたら、
お揃いのパジャマを着た正門が隣に座ってた。
「ごめん、寝てた……」
良「別にえぇよ。
今日はいっぱい歩いたし、
お酒も俺に付き合って結構飲んでたもんなぁ。
日付も変わるしもう寝よ？」
ずしっと重たい身体を起こしてみたら
ベッド横のデジタル時計は11月27日の23:59を指していて、
「あ、」
良「どうかしたん？」
綺麗な二重の瞳をぱちくりさせながら
首をあざとく傾げる正門をじっと見つめる。
……もしかしたら、
私は初めから正門が仕掛けた罠にハマってたのかも知れない。
思い浮かんだ1つのシナリオは、ゾッとするくらい巧妙で。
だけど、
それを確かめる気にも、責める気にもなれなくて。
……本当にズルい人、って
呆れながらカウントダウンする。
3，2，1……
「お誕生日おめでとう、正門」
素直にお祝いの言葉を伝えたら、
正門は大きな瞳を嬉しそうに細めて微笑んだ。
良「ありがとう。今年は結城が1番のりやな」
「……本当、ズルいよ。正門」
良「よぉ言われる」
「おいで、」と腕を広げる正門の胸に寄りかかったら、
ぎゅっときつく抱きしめられる。
「誕生日プレゼントは何がほしいの？」
良「何にもいらへんよ。
こうしておってくれるんが1番のプレゼントやから」
そうやって、
大事なことは決して自分から口にしない。
そういう所もきっと
私だけに見せてくれてる表情、ならば、
「……じゃあ、私をあげる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
