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甘えるような上目遣いで、
だけどどこか寂しげで。
正門にそういう
私が弱るのを知っててやってるから、余計タチが悪い。
「え、と……」
誤魔化すように髪を触った私の指先を絡めとりながら
ズルい表情して覗き込んでくるから、
両手も視線も全部、正門に捕まって。
良「返事はあとででえぇよ」
捕まえた指先をきゅ、と握って
「待ってるから、」って言った正門に、頷くことしかできなかった。
幻想的な紅葉もどこか上の空のまま、
ホームで帰りの電車を待ちながら
さっきのお誘いを何度も思い出す。
……正門からあぁいう表情で見られるの、
ずっと前に諦めてたのにな。
ちらっと隣を見たら、
正門は「けっこう歩いたなぁ」ってのん気な顔してるから、
悔しくてジャケットの端を摘まんでみる。
良「んー？なによ？」
「……正門が意地悪だから」
良「あはは、よぉ知っとるくせに(笑)」
「……うん、知ってる」
正門がそういう意地悪をするのも、
それが彼なりに甘えてるサインだってことも。
私がそんな正門を拒めない訳も。
全部、理解ってる。
だから、
「……正門、」
良「ん？」
近づいてきた列車のライトが正門の顔を逆光にする。
「……私も、正門ともう少し一緒にいたい」
プシュー……
電車の音でかき消されそうな声だったのに、
私を見る正門の瞳が、星の光を集めたみたいに瞬いて。
良「……そっか。
ありがとう、結城。俺のワガママに付き合ってくれて」
嬉しそうに顔を綻ばせた正門に
一瞬だけ抱き寄せられたら、
良「……やで、」
小さく囁いた言葉のすべてを聞いた訳じゃないのに
色んな感情が溢れて、
こっそり唇を噛みしめた。
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良「あかん、こんままねてまいそぉ……」
「正門せめて上着脱いで？」
良「むりぃ、ぬがしてぇ？」
美味しい日本酒の飲み゙比べをして
珍しく酔っぱらった正門を介抱しながら辿り着いたホテルは
想像してたよりずっとオシャレな所で。
ダブルベッドに腰かけて
甘える正門の上着を、呆れたフリして脱がせながら
本当は落ち着かなくてソワソワしてる。
おかしいよね。
今までだってそれなりのコトしてるクセに。
良「ゆうきぃ、お先にシャワーどうぞ？」
正門に促されるまま、
備え付けのパジャマを持ってお風呂場に入ったら
鏡に映る自分が
はしたないくらい絆された表情をしてたから、
思わず顔を覆った。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
