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良「ひゃあ、間に合ったぁ……！」
「疲れた……」
銀閣寺を出てバス停に着いたら
ちょうど乗りたかったバスに停まってたから慌てて飛び乗った。
―発車しまぁす……―
息を整えながら、ふと窓の外を見たら
飴色に染まった夕方の街並みがとても綺麗で。
窓際に座ってる正門もじっと外を眺めながら、
指先を小さく動かしてる。
……きっと今、頭の中でギターが鳴ってるんだろうな。
そう思いながら整った横顔を見てたら
視線に気づいた正門が振り返った。
良「ん？」
「ううん、なんでもない」
盗み見してたのがバレないように目を逸らしたら、
がたっとバスが揺れて肩がぶつかる。
良「っと、大丈夫？」
「うん、ありがと」
良「疲れたやろ？
しばらくかかるし寝とってもえぇよ」
「正門はいいの？」
良「こぉ見えて体力はある方やからなぁ。
俺は気にせんとゆっくりしとき」
ほら、と促す正門に甘えて肩に頭を預けたら
正門の頬が寄りかかってくる。
良「……なんか幸せやなぁ、」
「うん」
良「こんままずっと旅できたらえぇのに。
色んなとこ泊まりながらさ」
「それも、いいかもね」
良「山ん中の旅館とかよくない？温泉入ってのんびりして」
「晩ご飯は懐石料理？」
良「そうそう。
そんでお揃いの浴衣でお酒飲むねん」
「酒門」
良「やってそれが旅の醍醐味やんか(笑)
ほんで、酔っぱらってそんまま寝れたら最高なんやろうなぁ」
「そうだねぇ……」
良「……あかん、俺も寝てまいそう(笑)」
「じゃあ一緒に寝過ごしちゃおうか？」
良「それも魅力的なお誘いやなぁ、」
結局、私のお誘いに返事が来る前に目的のバス停に着いて。
乗り換えた電車の中で2人して居眠りしてたら、
お目当ての駅で降りそびれそうになった。
良「危なぁ。アナウンスがもうちょい小さかったら
あんまま鞍馬まで行ってたんやろうな(笑)」
「途中の紅葉のライトアップも全然見てないしね？」
良「ほんまやな(笑)帰る時に動画撮ろうな」
「うん、」
さっき撮り損なった分までたくさん写真を撮りながら
灯篭の並ぶ石階段を登ってたら、
良「足元暗いで」
と、また自然に手を繋いで。
良「なぁ、さっきの話やねんけど。
……ほんまに今夜、お泊まりせぇへん？」
「え？」
灯籠のぼんやりとした灯りに照らされて、
正門と目が合う。
良「さすがに旅館は無理かも知れへんけど
……もうちょっとだけ、一緒に居ろうや」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
