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「……正門、」
いつもと何も変わらない優しい声に目線をあげる。
良「俺は去年のことちゃんと分かってるから。
……もう、自分を傷つけんといてよ」
手を引かれて抱き寄せられた正門の腕の中は暖かくて、
ずっと行き場がなかった涙が頬を伝う。
良「結城が自分のこと汚いって思うんやったら、
俺がその気持ちごと抱きしめるから。
軽蔑なんかせぇへんよ」
あぁ、……やっぱり正門には敵わないな。
私がずっと欲しかった言葉を
当たり前にくれて、
寄りかかりたい体温で包んでくれるから。
「正門……」
良「ん？」
見つめあった頬に残る涙を拭う手が優しくて、
「……もし、」
ワンッ！
ワン、ワンワンッ！
―ごめんなさいっ、こら吠えないの！―
「ひゃっ、」
良「あらぁ♡かわえぇわんちゃんやなぁ」
尻尾を振って飛びついてくるコーギーとゴールデンレトリバーに
目をくしゃくしゃにしながら正門がしゃがみ込む。
良「お名前はぁ？」
ヴヴゥ、ワン！
―もう！チェチェとよし子って言うんですけど、―
良「へぇ、珍しいお名前やなぁ。
よろしくなぁ、チェチェちゃんとよし子ちゃん♡」
ふいっ、
良「……ちょっと警戒されてるかも(笑)」
困った顔して見あげてくる正門と
わんちゃん達の動きがシンクロするから、
まるで犬が3匹いるみたいに見えて、
申し訳なさそうだった飼い主さんと一緒にくすっと笑っちゃった。
―それじゃあ、この辺で―
「どうも、」
良「またなぁ♪」
ぷいっ、
最後まで正門にはそっぽ向いてたわんちゃん達を別れたら
哲学の道の端まで来ていて。
良「なんか甘い匂いせぇへん？」
「え、どれだろう？色々匂いはするけど」
良「ちょっと行ってみようや」
さっきまでとは違って観光客で賑わってる坂道は、
出店からするいい匂いが香しくてつい目移りしちゃう。
良「あ、結城。いちご飴あんで」
「あらら、」
てらてらと光ってる飴の棒が軒先に並んで
小さい子どもを連れた家族が並んでる。
良「俺らも並ぶ？」
「うーん、」
あれぐらいなら、きっと入らないこともないだろうけど。
「……やめとく、
食べたい季節は通り過ぎたから」
良「そっか。
なら帰りにお団子食べよ。
ほら、あっこのあん団子美味しそうやで？」
「ふふ、食いしんぼう(笑)」
良「まだまだ育ち盛りなんですぅ」
さっきまでの会話がまるで夢だったみたいに
2人ではしゃぎながら参道を登った。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
