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―ご来場有難うございました、―
あまり出番がなかった音声ガイドを出口で返したら
そのままグッズを見てまわって、
良「あっ、ポストカードあるやん。えぇなぁ」
「マグネットもいいよ。
ちょっとおっきいのを冷蔵庫とかに貼ったら可愛い」
良「あー、そぉ言えば結城のお家にも貼っとったな。
あれは誰さんのなん？」
「フェルメールとミュシャ、」
良「なるほど、ほんなら俺もマネしよ。
これでお洒落雑貨デビューや」
「ふふっ、かぶれてるなぁ(笑)」
良「えぇやん！ちょっとかぶれたいお年頃やろ(笑)」
どうやら“そういうお年頃”らしい正門は
マグネットとポストカードを選んで。
私も悩んだ挙句、おんなじマグネットを選んだら
「ほら！俺とお揃い！」って可愛くドヤ顔してた。
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美術館を出たら正門が「お腹空いたなぁ」って
あざとくお腹をさすってアピールしてくるから
すぐ隣のレストランで遅めのランチをすることにして。
良「なんか思ってたよりおしゃんなお店でビックリしてる」
「ね？」
良「どうしよ、テーブルマナーとか怪しいねんけど」
「そんなにお高い店ではないと思うけどなぁ」
良「でもお箸じゃあかんのやろ？
フォークとナイフかちかちしなあかんねやろ？」
「ふふっ、それはそうかも(笑)」
「はぁ、」って物憂げに溜息を吐いてたクセに、
いざ料理が届いたら
そつなくフォークとナイフを使いこなしながら
「おいしぃ♪」ってもぐもぐ食べてるのが可笑しくて。
良「なによ、美味しいんやからしゃーないやん！」
「はいはい(笑)よかったら私のも一口食べる？」
良「えっ！えぇの？」
「いいよ、『美味しそう』って顔で見てたから」
良「ははっ、バレてたか(笑)」
この食いしんぼうめ、って大きめに差し出した一口に
ほっぺたをぷくっとさせながら
良「うまぁ！」
幸せそうに口元を綻ばせてる表情にふと誰かを重ねかけて、
そっと視線を逸らした。
・
正門が行きたい紅葉のライトアップまで時間があるから
せっかくだし哲学の道を銀閣寺の方まで
お散歩しようってことになって。
良「ほんま気持ちえぇお天気やなぁ、」
「そうだねぇ……」
すれ違う人もいない静かな住宅街をのんびり歩く
小春日和の京都の昼下がりは
まるで夢の中に迷い込んだみたいに
ふわふわする。
良「手ぇ、繋ご」
誘われるままに自分より暖かい手を取ったら、
言葉に表せない感情で
身体の奥がぐずついた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
