〇交じり逢って、藍と成る。-Blue. ページ40
・side.Yuki
『11月27日☆日曜日
今日のラッキーカラーはオレンジ！
自分に素直になったらいいことがあるかも？』
「オレンジねぇ……」
あいにく、今日の格好にはそれに当てはまるものはなくて。
これじゃ運気も下がっちゃうかもね、なんて
待ち合わせの駅横で手持ち無沙汰に占い結果を読んでたら、
良「おはようさん」
「あ、おはよう」
ひらひら手を振りながらやってきた正門は
いつもよりちょっとだけよそ行きの格好をしてる。
良「どうかしたん？」
「ううん。今日の正門はデニム感が薄いなぁと思って」
良「まぁデニムでもよかったけど。
せっかく美術館行くんならこういうファッションもありやなぁって。
そういうお嬢さんも今日はコートなんか着ちゃって」
「まぁ……、京都の美術館だから？」
良「ははっ、考えることはお互い様っちゅーこっちゃな(笑)
ほんなら、ぼちぼち出かけましょうか？」
「うん、」
大学の最寄り駅から京都まで行く日曜の電車は混んでいて、
さりげなく場所を作ってくれる正門に甘えながら
見慣れない景色に変わってく車窓を眺めてたら
つん、と控えめに頬をつつかれた。
「ん？」
良「いや、おめめキラキラさして外見てるから
かわえぇなぁって」
「ふふ、思ったよりワクワクしてるのかもね」
良「なによ、ドライブの時と同じくらい
正門とのお出かけも楽しみにしといてや」
「だって同期みんなと正門比べたら……、ね？(笑)」
良「こら(笑)」
さっきより少しだけ強めに頬をつつかれて、
くすぐったく笑いながら正門を見上げる。
「美術館、今日も混んでるんだろうね」
良「そうやなぁ。お昼どうする？
着くんは11時過ぎやし、のんびり観てたら昼時抜けるんちゃう？」
「そうだね、そうしよっか」
良「了解。俺もゆっくり観たい思ってたからちょうどえぇわ」
きっと私が観るのに時間がかかることを分かってて
敢えて、そういう言い回しを選んでくれる正門は
やっぱり優しい。
良「疲れてへん？」
「大丈夫、平気だよ」
良「しんどかったら寄っかかってもえぇよ？」
「でも、私ばっかり寄りかかっても困るでしょ？」
優しさのつもりでそう言ったのに
正門はへにょんと眉をさげて、
良「そんなん、気にせんでえぇのに」
上目遣いに私を見る瞳は甘くとろけていて。
あぁ、今日はこういう正門に絆される1日になるんだなって
ガタン、と揺れた電車で
少し強めに足を踏ん張った。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
