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周りのおっちゃん達がちらっとこっち見たけど
そんなん知ったことちゃうくて。
「大晴くん言うたやないですか！
Aちゃんのこといっぱい笑顔にしてあげたいって！
それやのに何でそんなんあっさり諦められるん？
ダメですよ、
『疲れた』とかそんな理由で諦めるんは俺が許しません。
許しませんから！！」
あれ、なんでこんな怒ってんねやろ。
なんでこんな悲しいんやろ。
なんで、
大「晶哉、何で泣いてるん……？」
ぽろぽろ流れる涙を見て、大晴くんが困った顔してる。
そんなん俺やって分からんよ。
ライバルが減って嬉しいはずやん。
千載一遇のビッグチャンスやのに、
喜ぶ気持ちがこれっぽっちも湧いてこんくて。
「たいせぇくん……イヤ、やっ。
諦めんといてよ……」
大「晶哉、」
「Aちゃんを、……ひとりに、せんといて、」
あぁ、俺はAちゃんに恋してる大晴くんが好きやったんやなって
今、初めて気づいた。
俺の手の届かへんとこに大晴くんはいつもおって、
悔しいってずっと思ってたはずやのに
どっか安心してて。
Aちゃんが大晴くんと笑ってるの見るたんびに
よかった、って思ってる自分がおって、
この人になら、Aちゃんを任せられるって
本当は、ずっと前から認めてて。
「うぅっ、あかんよぉ……たいせぇくんっ、
Aちゃんを、まもって……」
優しすぎるくらい優しいAちゃんを。
自分のことボロボロになるまで追い詰めちゃうAちゃんを。
やっと見つけた自分の居場所で毎日頑張ってるAちゃんを。
それは、俺の役目ちゃうから。
大「……晶哉、」
落ち着いた声で名前を呼んだ大晴くんを見たら、
ませた顔して微笑んでて、
大「俺は、自分がユキさんに贈った気持ちに
名前がついて返ってくることから逃げた。
やけど、晶哉は俺とちゃう。
ちゃんと気持ちを伝えて、……ちゃんと返されてほしいから」
「……なによぉ、カッコつけんといてよぉ」
国語いっちばん苦手やのに、
そんな難しい例えされても分からんもん。
びしょびしょ泣き続ける俺を大晴くんは見守ってくれて、
泣き止んだあとのラーメンは麺が伸びきってて、
頑張って食べたらお腹が弾けそうになって。
大「ほんなら、また遊ぼうな？」
夕方からバイトやって大晴くんを駅前で見送ったら、
胸がいっぱいいっぱいになって
もう一回、泣いてもうた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
