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良『まぁ、もう二度と会うことはないやろうから
今更何言うても耳障りな遠吠えでしかないねんけど』
酒『……この野郎っ、』
殴りかかろうとする酒寄さんが抑え込まれるのを
正門先輩は黙って見下してた。
それはいつも通りの後ろ姿だけど、
きっとすごく怒ってて。
冷たくて熱い怒りを背負った背中を、ただ見てるしかなかった。
酒『クッソ！マジでふざけんなよ正門！
お前ばっかうまく立ち回りよって。
……どうせ、お前やって、』
呻くように呟いた酒寄さんの言葉の続きは
舞台袖まではよく聞こえなかった。
―よし、行くぞ―
隠れてるカーテンの横をバタバタと足音が通って行って、
バタン、
重たいドアが閉まる音がしたから
恐る恐るカーテンから顔を出したら、
1人、舞台に残った正門先輩は
私に背中を向けたまま、溜息をついて。
良『……きっと、結城傷ついてまうんやろうなぁ』
ぼそっと小さい声で呟いたその台詞に
何故か全身がゾワッとして、
しばらく声がかけられなかった。
・
「なんであの時ゾワッてしたのか、今でも分からなくて。
結城先輩のこと心配してただけなのにね(笑)
……こじけんくん？」
黙ったきりのこじけんくんを見たら、
何かに戸惑ってるみたいに目をきょろきょろさせてて、
健「マジか……、おぉ、マジか、」
って1人で呟いてるから
私には何にも分からなくて。
「なにか思い当たることがあるの？」
恐る恐る聞いてみたら
こじけんくんは「あぁ、」って頷いて、
だけど「いや、」って首を捻って、
え、これはどっちなんだろう？
「あ、あの、」
健「あのさ、エリー。……その話、一旦俺預かりにしてくれへん？」
「えっ？預かりってどういう、」
健「その話を他の人にするん、ちょっと待ってほしいかも。
特にたいせーと、あとは誠也くん辺り」
「あ、うん……いいけど、どうして？」
健「ちょっと様子見したいから。
エリーにもその内話す。多分。……いや、せんかも」
「そう、なの？」
どうやら私のグルグルは、まだ解決しないみたい。
こじけんくんに話したからちょっとはスッキリしたけれど、
でも代わりに
今度はこじけんくんがグルグルしてるみたいで、
健「……まっさん、マジか」
頬杖をついた手で口元を隠しながら
何度目かの「マジか、」を呟いたこじけんくんの瞳が
思ったより真剣だったから、
なんだか、胸の奥がザワザワした。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
