◆“元”部長の後悔 ページ24
・side.Seiya
カランカラン、
淳「……なんとなくそうかなって思うたわ(笑)
いらっしゃい、すえ」
「お邪魔します淳太くん」
カウンターでグラス拭きながら笑てる淳太くん。
いつものカウンター席に座って上着を脱いでたら
すっと温かい紅茶が出てきて。
淳「日替わりやろ？
今日ビーフシチューやもんな」
「はい、ここのビーフシチューめっちゃ好きなんすもん」
淳「ありがとう、奥さん喜ぶわ(笑)」
「日替わり1つ」って厨房に声かけたら
「はぁい」って奥さんの声がして、
またお腹おっきくなったんかなぁとか思いながら紅茶を飲んでたら、
淳太くんが俺の前に椅子を動かしてきた。
淳「で？今日は何悩んでんの」
「……淳太くんって超能力者なんすか？」
淳「アホ、そんな訳あらへんやろ(笑)
すえの顔は分かりやすいだけや」
ツッコミながら注いでくれたおかわりの紅茶から
ふんわりえぇ匂いがする。
「別にたいしたことちゃいますよ。
……無責任な部長やったなぁって、色々反省してるだけです」
淳「そうなん？この間役員交代終わったんやろ。
ちゃんと1年間部長頑張ってたやん」
「まぁ、みんな俺のワガママによぉついてきてくれたなぁって
そこは感謝しかないんですけど、」
淳「けど？」
首を傾げる淳太くんの目が優しくて、
なんとなく胸につかえてたもんがするする言葉になってまう。
「……前にここで、大晴にユキと正門の話したやないですか。
俺はあん時、大晴に『諦めないでほしい』って言ったんです。
『頼むわ』って。
なのに『大晴の恋を100パーで応援してる訳やない』とも言ったんです。
『正門とくっつくならくっつくでそれでえぇ』って」
淳「言うてたなぁ、そんなん」
「……なんで、もっと素直に応援してやれへんかったんかなぁって」
唇に当たる紅茶はまだ熱すぎて、
カップを置いたら俯く自分の顔がよぉ映る。
「あん時は、3人とも気にかけてるつもりやったんです。
みんな幸せになれたら、とか思っててん。
やけど、それはただのお節介で。
大晴は純粋に今のユキが好きやったはずやのに
無理くり過去の話に巻き込んでもうて」
なんちゃってインターン用に染めた黒い髪が
頬にかかるから鬱陶しくて首を振る。
染料の匂いがまだちょっとするんがイヤで、眉を顰める。
「……俺は結局、
去年、ボロボロのユキを見た時のショックを
まだ消化しきれてへんのやろうなって」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
