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「やから、もうユキさんが色々悩むことないで？
俺はなーんも気にしてへんから(笑)」
あの夜感じた“透明な壁”は
確かに俺らの間にあった壁で。
俺が出会う前の、知らないユキさんがおって、
ユキさんがそれを知られたないって言うんなら、もう聞かへん。
ユキさんに迷惑かけることもせぇへん。
「付き合ってほしい」とか、
「好きや」とかもう言わへんから。
「でも、それと部活は別やん！
俺、演劇辞めるつもりないし、むしろめっちゃやる気やで(笑)
役者なったんも表現の仕方とかもっと勉強したいからやし、
いつかは自分で脚本書けるようになりたいとか思ってるから」
ただ、「演劇部」の時だけ近くにいさせてほしい。
脚本のこと考えてる時のユキさんの表情を
真剣で、楽しそうで、キラキラした表情を
近くで見れるだけで、もう俺は満足やから。
それだけで、えぇから。
「やから、これからも
“えぇ先輩”ってことでよろしくお願いします(笑)
ユキさん」
結「大晴くん、……」
俺を見あげるユキさんの瞳が
ゆっくり揺らいでいって、
結「……うぅ、うっ……」
「え、ユキさんなんで泣くん？(笑)」
結「グスッ、ごめん……ごめん、なさい……っ」
「えー泣かへんでよぉ(笑)
ハンカチ、バッグに置いてきたって」
結「……そんな顔、させて、……ごめん、っ」
……もう、そんなん言わんでよ。
勝手に恋して、勝手に諦めただけやのに。
やっぱこの人、優しすぎるって。
―あと3回ぐらいはワガママ聞いてください(笑)―
―大きく出たね(笑)―
―だってドライヤーとデート1回じゃ釣り合い取れへんもん―
なぁ、最後のワガママやからちょこっとだけズルさせて？
「もぉー、ユキさん泣き虫やなぁ(笑)」
綺麗な髪の毛を優しく撫でる。
「好きや」って気持ちが伝わらへんように、
貴女を傷つけへんように。
菊「ちょ、大晴なにをユキ泣かしてるん！？」
「え、あ、これは色々あって、」
菊「はぁ！？うちのユキ泣かしたら処刑なんやけど！？」
「え、待ってやキク子さん冤罪やって！」
菊「言い訳無用即実刑！覚悟せぇよ大晴！」
「え、ちょ、ムリムリ！」
健「逃げろーたいせー(笑)」
めっちゃ怒ってるキク子さんから逃げ回りながら
ふっと腕を組んだ誠也くんと目が合って、
誠「……アホ、」
口パクでそう呟いて眉さげて笑うから
強がった色々が零れそうになって、唇をぎゅっと噛みしめた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
