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こじけんの言葉は俺にはまったく意味が分からんくて。
『いや、……酒寄はユキさん虐めてたんやで？
それで好きってあり得へんやろ』
健『たいせー、
お前はそういうヤツちゃうから分からんやろうけどな。
世の中には「綺麗な女を自分に従わせたい」って
プライド富士山みたいな男もおるらしいで』
キィー……、ってブランコが止まって
こじけんがこっち見る。
健『ユキさんはごっつ美人やし才能もある。
そんな女を力技でも自分の言うこと聞かせられたら
ソイツのプライドは大満足やねん。
やけど、ユキさんが全部バラしたせいで
ソイツは演劇部から追い出されてもうて、
自分を袖にした女に嫉妬やら愛憎やらなんやら重なって
あんな阿呆やってもうたんちゃうん？』
『そんな……、』
分からへん、全っ然共感できひんよ。
だってそんなん好きちゃう、ただの自己満やん。
健『これは誠也くんから聞いた話やけど、
ユキさんは酒寄から散々セクハラモラハラされて
そん時に自分の髪をぐちゃぐちゃに切ってもうたらしい。
……無意識に男を誘惑してまう自分が許せんかったんちゃうかな。
やから、自分は汚いって』
『そんなん！それは勝手に惚れる男が悪…、』
そこまで言って、
あ、って気づいた。
俺も同じやん、って。
勝手に惚れて、勝手に傷ついて、
“何でそんなこと言うん？”って自分の気持ち押しつけて。
―……大晴くんにだけは、言いたくない、―
あの台詞の意味が、分かった。
そりゃ言えへんよな。
ユキさんのこと好きな男なんて今までやっていっぱいおったやろうし、
酒寄みたいなんに色目向けられて追い詰められたら
『好きやから頼って』なんて信用できひんよな。
怖いよな。
なのに、何も知らんでずっと、俺はユキさんに、
『……ッ、』
健『たいせー？』
気づいたら涙がぽろぽろこぼれてた。
俺はずっと、ユキさんを傷つけてたんかな。
「好き」って気持ちで、
大好きな人を追い詰めてたんかな。
もし、そうやとしたら、
俺はとんでもない大阿呆や。
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「……すみませんでした。
嫌な思い出掘り返されて辛かったのに、そんなん言いたないですよね。
『頼って』とかほんま、何も知らんかったクセにって(苦笑)」
結「そんな、大晴くんは、」
フォローしてくれようとするユキさんに首を振った。
その優しさに、もう甘えたないから。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
