・ ページ3
・
腕組みしながら正門に訊いた末澤の声は
ユキがおった時とはまるで違ってて。
ちゃんと気ぃ遣ってたんやなって、
コイツにはそういう優しいとこがある。
まぁ、やからこそ
今がちがちに怒ってるんやけど。
良「確かに、俺もそう思うてましたけど、
やっぱし結城も知っとくべきやろと思って」
誠「それは、何をもってそう思ったん？」
イライラしてんねやろうな。
組んだ腕の上で指とんとんしながら話してるもん。
そんな末澤相手に正門も顔色ひとつ変えへんし。
折れる気0ってか。もう怖いって。
良「もし、仮にそれを知らんでおったとして、
なんかの拍子でうっかり真実を知った時に
結城がどんだけショック受けるか。
ちゃんと順追って説明した上であんだけ取り乱してたんやから
前置きなしのそん後のケアもなしでこの話が結城の耳に入るリスクは
負うべきやないと考えました」
正門の言い分はもっともで、
ほんま、これに関しては個人の裁量というか
人によって意見が分かれるとこなんやろうけど。
けど、末澤は末澤で思うところがあるから
こうして正門をじっと睨んでる訳で。
あぁ、気まず。
ぶっちゃけ帰りたいけど
今帰ったら、絶対殴り合いになる予感しかせんから
部活のためにもここは腹に力いれて見守るしかない。
誠「……なるほどな。確かにそれも一理あると思うわ。
けどな、正門。
俺が気になってるんは
お前のその優しさは、ほんまにユキを思ってるかってことやねん」
良「……どういう意味ですか？誠也くん」
誠「分からんか？
……正門、お前がユキを手放せへんから
ユキを追い込んだんとちゃうんか」
末澤の言葉に、正門の表情は変わらんまんまで。
でも正門も演劇部では1，2を争う演技派やから
そんなんは何も根拠にもならへんくて。
誠「もし、ほんまにそんな気持ちがあったんやとしたら
お前ら距離置いた方がえぇで。
傷つけてまで傍に置いとくんは愛とちゃう。……ただの支配や」
“俺だけがあんたの生きるも死ぬも握ってる。
大丈夫、怖くないよ。
俺はあんたが心の底から好きやで。大好きや。”
確か、『欲動』でそんな台詞があった。
脚本読んだ時は何も思わんかったけど
いざ、正門が声と動きをつけたんを初めて見た時に
もちろん役なんは分かってるのに、
その奥に“正門良規”としての感情が透けた気がして、
ゾッとするくらい生々しく感じたんを、ふと思い出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年12月1日 22時
